126-2

「……そんな……ボクが負けるわけがない……姉さまと……還るんだから……」
「ミトスくん!」

ミトスくんがよろけた瞬間、わたしを拘束する光の剣が姿を消す。急になくなったことで、立ち上がろうとしていたわたしは勢いあまって転ぶように地面に手をつけてしまった。
それでも再び顔を上げて、駆け出そうとして。遠く、うずくまろうとする彼を呼ぶ。
……もし、ここで、手を伸ばしてくれたら。手をつかむことができたら。きっと大丈夫、間に合うよね、ミトスくん。
呼びかけた彼は、わたしを見て、目を細めて……でも、手は、伸ばしてくれなかった。

プロネーマがそうであったように、彼の体は光となって霧散する。
そこには何も残らない。わたしがようやっと彼のところにたどり着いても、何もつかめない。ただ、再び地面に倒れ伏しただけだ。何も。何もない。
呆然とするわたしのところに、ジーニアスが駆け寄ってくるのが見える。そうして、たぶん、少し離れたところに転がったのだろう、ミトスくんのエクスフィアを拾い上げて。ジーニアスはただ無言で、わたしをぎゅうと抱きしめた。

大いなる実りがゆっくりと降りてきて、再びそこに鎮座する。
少しの間、ただ静寂だけが、ここを支配した。

「……終わった」
「それはどうかな」

誰かが呟いた声を否定するように、その人は現れる。
どこかからワープしてきたのだろうか。彼は……クラトスさんは。相変わらず、いつも通りの表情で、わたしたちを、ロイドを見ていた。

「まだ世界は引き裂かれたまま。大樹も発芽していない。何が終わったのだ?」
「ちょうどいい。あんたに聞きたかった」

突然現れたクラトスさんに動揺することなく、ロイドは彼に向き直る。

「あんたはミトスの何に共感したんだ。どうしてオリジンの封印に協力したんだ?」
「ミトスは……私の剣の弟子であり、私のかけがえのない仲間だった。それで……十分ではないのか?」
「仲間だったら……そいつのしていることがどんなひどいことでも許すっていうのか! ナギサみたいに、敵対するのが苦しくても、間違えた時に怒ってやるのが、仲間なんじゃないのか!」
「……これ以上話すことない。オリジンの封印を解きたければ、私を倒すがいい」
「クラトス! まて!」
「……オリジンの封印の前で待つ」

伝えたいことは伝えたとばかりに歩き去ろうとする足音が聞こえる。
このまま本当に、ここから立ち去るつもりなのだろう。オリジンの封印を解いて、契約をして、エターナルソードを手にして、世界をひとつに戻す。
その最後の仕上げに自分と戦えと、クラトスさんは言っている。
それは、わかる。わかる、けれど。

「……なに、それ」

思わず、声が落ちる。
クラトスさんの足音が止まる。

「なんで……なんで、戦わないと、いけないの」

思わずこぼれた声は、思っていた以上に、震えていた。