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「結局待ち合わせより先にみんな合流しちゃったね」
「ええ。せっかくの自由時間なのに、何も変わらないわね」

鉱山から戻って、そのままリーガルさんとプレセアちゃんが合流した時点でほとんどいつもと変わらないな、とは思っていたけれど。
サイバックにについて、リフィルさんとジーニアスにまで合流してしまえば、もう自由行動なんて言葉だけになってしまった。
集合時間は明日だというのに、結局みんなそろってしまったね、でもこれはこれで面白いね、なんてひとしきり笑い合った後、わたしたちの視線はジーニアスへと集中した。

「ところでその格好は?」
「ねこにんの恰好だよ」
「かわいいねえ」

頬を染めながらも、ふふん、と胸を張ってみせるジーニアスは、今、普段とは違う恰好をしている。ピンク色のねこの着ぐるみのようなそれは、世界各地、どちらの世界でもたまに見かけるねこにんの恰好そのものだ。
詳しいことはよく知らないが、なんでもこの自由時間、ねこにんといろいろなミニゲームで競い合って得た景品、らしい。姉に「可愛らしいからぜひ着てみたら」と言われて着てみたところだった、とのことだ。
うん。実際に可愛い。コレットとロイドなんてにこにこと楽しそうにジーニアスを撫でまわしている。わたしもぎゅっとさせてほしいな〜なんて思っていると、横でそわそわと追いつきなく体を揺らす二人に気付いた。

「ねこにんの肉球は……ふにふになのでしょうか」
「……気になるな」
「……ジーニアス……触らせてみては……くれないでしょうか……」
「そうだな……彼は押しに弱いところがある。君がお願いすれば、触らせてくれるやもしれぬ」
「そうですね……彼は優しいいい子です。言ってみます」

リーガルさんとプレセアちゃんという肉球をたしなむ二人だ。どうやら、ねこにんの肉球をずっと狙っていたらしい。頼んでもいいかな、ふにふにしたいな、とそわそわしていたようだが、二人の間で方針が決まったようで、さっそくジーニアスのもとへと駆け寄った。
もちろん。ジーニアスがプレセアちゃんの申し出を断るわけがない。満足してもらえるかわからないけれど……と恥ずかしそうに手のひらを差し出す様子はちょっと愉快だな、と冷静に見守る間に始まった二人のふにふにタイムに、ロイドとコレットはもちろん、しいなとゼロスくんも興味深そうにジーニアスを囲んだ。……順番待ちである。

なんか、小さなねこにんが集団に囲まれている光景って、思った以上愉快だな……と腕を組む。別に、出遅れてしまったせいで並ぶに並べなくなっちゃったから冷静に俯瞰しているふりをしているわけじゃない。うん。違います。
ふにふにと一心不乱に肉球を楽しむ二人をちらちらと見ながら、わたしは同じように微笑ましそうに見守っているリフィルさんの隣にすすす、と移動した。

「ところで、どうして二人はサイバックに? あ、わたしたちは資料館に用事がありました」
「あら。それなら目的は同じかもしれないわね。ほら、マクスウェルが言っていたでしょう。本当にあの本がそうなのか、確認しておきたかったの」
「ああ……あの、封魔の石の。確かに同じ目的です」

決闘を終えて、闘技場を楽しんで、鉱山に行ってから温泉も満喫して。そうして次の移動地にサイバックを選んだのは、たった今彼女が言った通り。わたしたちも、マクスウェルの言っていた封魔の石で魔王が封じられた書を燃やせ……という話が気になったからだ。
わたしはさっぱり覚えていないのだけれど、ここにあったエクスフィアのついた本がそれなのかを確認して、問題なければそのまま燃やしてしまおう、というのが目的である。

みんな考えることというか、気にすることは同じなんだなあと思っていると、ふと、じっとリフィルさんに見つめられていることに気付いた。
別に今さら目を合わせられないなんてことはないけれど、美人さんにまじまじと見つめられるのはちょっと照れちゃうかも。

「何かついてます?」
「いいえ。……何か、いいことでもあったのかしら」

頬をかきながら問いかければ、リフィルさんはふふ、と笑ってわたしの頬を撫でる。
明るい顔になったわ、と言われて、あ、と思った。彼女も、わたしのこと、心配してくれていたって、何故だか今になって急に思い出して。それから、深く聞かずにそう言って見守ってくれる優しさに、すごく嬉しい気持ちになって。
わたしはリフィルさんの手のひらにそっと頬を寄せながら、はい、と笑った。

「……仲間っていいなあって、思ってました」
「そう。それならよかった」

すっごく、すっごく、悲しくて。
いっぱい、いっぱい、泣いてしまって。
空元気でなんとか乗り越えようとしたけれど。でも、ちゃんと立ち向かって前を向くみんなとか、言葉を届けてくれる人とか。静かに立ち止まって悩んでいる姿や、一緒にいてくれる仲間たちがいたから。わたし、まだ、頑張れるよ。
まだ……まだ、ちゃんと。歩いて行ける。
一人じゃないって素敵ですね、と言えば、リフィルさんも笑顔を返してくれた。