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今のパルマコスタにクララさんを連れていくわけにはいかないし、かといってこのまま一人で放り出すわけにもいかない。
とりあえず、しばらく身を寄せられるところを探すお手伝いがしたい、と申し訳なさそうに言ったコレットに、わたしは笑ってうなずいた。優先すべきはクララさんであることも間違いない。
ただ、時間をかけすぎてしまうのも、と思ったので、わたしは別行動でパルマコスタ跡地に向かうことにした。最初に言った通り、全員で行く必要はない、個人的な用事だ。一応、心配だと言うロイドはわたしについてきてくれたけれど、一人でも問題ないのだ。
……でも、思った以上に被害が大きく、険しい道のりになってしまったから、一人じゃなくてよかった、と思ったのは秘密だ。
そうして乗り越えた先。たどり着いたパルマコスタ跡地で、見知った人影を見つけて、わたしたちはあれ、と首を傾げた。

「あれ? ユアン?」
「お前たち、何故ここに!」

振り返ったのはユアンだ。
周りには誰もいない。どうやら一人でここに来たらしい。
ただそこに立っている、というよりは何かを探していたようで、がれきの下などを屈んで覗き込んでいた彼はわたしたちに気付くと、慌てて咳払いをして立ち上がった。

「何か探してるの?」
「か、関係ないだろう」
「じゃあ、何をしにこんなところに?」

ミトスくんを倒したことでクルシスが活動できない状況であるとはいえ、救いの塔でのクラトスさんの言葉通り、まだ何も終わっていないのに。仮にもレネゲードの頭領がこんなところで何をしているのだろう。
じとり。わたしもロイドも怪しんでいることを隠さない視線を向ければ、ユアンはやがてため息を吐いた。

「……思い出していたのだ。ミトスとクラトスと……マーテルと四人で旅をしていたころを」
「そうか。あんた……ミトスの仲間だったんだもんな」

ロイドの言葉に、そっか、と改めてユアンを見る。
禁書の中でも、彼がミトスくんと共にいるのを見た。そもそも知識として知っていたし、彼から断片的にだけれどその話は聞いた。だから、別に新しい情報を得たわけでも何でもない。
でも、こうしてパルマコスタの……暴走した大樹がいた場所、に立って、その話を聞くのは、なんだか不思議な気持ちだった。

「どうしてミトスと一緒に戦うことになったんだ?」
「……ミトスの理想は青臭かった。マーテルの慈悲深い態度もうっとうしかった」
「……え」

ふん、と鼻を鳴らすユアンは、嘘を言っている様子ではない。
たぶん、本当に。本当にそんな、機会があればいくらでも二人を見限るような気持ちで、一緒に旅をすることになったのだろう。
確かに、旅の仲間になる理由なんていろいろある。わたしたちだって、その方が都合がいいからとか、監視役としてとか、いろんな理由で仲間になった。だから、いかにも敵対しています、気に入りません、という態度で仲間になるのも、不思議なことじゃないけれど……なんだろう。
うっとうしい、とか言う割に、その目がとても優しいから、その言葉がとても意外に聞こえるのだろうか。

「それを証明しようとついていき結局、二人の生き方に私自身が傾倒してしまった。ミトスはいつも前を見て、マーテルはどんな苦しみにも笑顔で耐えていた。二人は……ロイド、お前と神子に似ていた」

いわば成り行きだ、と肩をすくめる彼は、やっぱりとても優しい顔をしているように見えた。