「よし、クラトスのところに……!」
「ロイド、待って! 少し落ち着いた方がいいよ。これから戦うクラトスさんは、ロイドのお父様なんだよ?」
「わかってるよっ! だから今日まで二日間、ちゃんとゆっくり時間を取ったんだ」
中に入るなり、そのままトレントの森へと駆け出そうとするロイドをコレットが呼び止める。
そうだ。二日間、ゆっくり時間をとった。それはみんなの小さな心残りを解消するためだけではなくて、ロイドがクラトスさんと戦うためにしっかりと心構えを作るためでもある。そして実際、ロイドはこの二日間、とても落ち着いていたし、ここに来るまでの間も、少し緊張しながらも冷静な態度だった。
でも……今は、ちょっと、焦っているように見える。
わたしが後悔しないでって言ったからかな。それとも、いざ目の前にしたら、急に焦りが出てきたのかもしれない。
けれど、自由行動前の方が落ち着いているように彼に、みんなが気付かないわけがないのだ。みんなは一度顔を見合わせると、もう日が高くなってきたね、と誰かがつぶやいた。
「オリジンはトレントの森の奥にいるみたいだし、森の中って迷いやすいよね」
「今から行ったんじゃ、夜を森で過ごすことになりそうだ」
「でも……」
「……コレットや皆の言う通りだな。ロイド、目の前に迫ったからとて、焦るな」
「クラトスとの戦いが世界の命運を握っているのよ。今夜はここに泊まって、気持ちを整理なさい。体調を万全に整えるのは当然のことよ。……これが旅の最後になるのだから」
口々に落ち着け、と引き留めるみんなに、ロイドも少し落ち着いたのだろう。
一度大きく深呼吸をすると、トレントの森に向けていた体ごと、わたしたちへと向き直った。
「……わかったよ」
これが、最後の自由時間だ。
最後の戦いの前の、大事な時間。
……わたしの異世界での冒険が始まった場所で迎える、決戦前夜、だ。