朝。宿の前でロイドを待っていれば、彼はいつも通りの落ち着いた様子で出てきた。
昨日は今にも飛び出してしまいそうな焦りが見え隠れしていたのに。一晩深呼吸をして、自由行動をしていたときと同じくらい落ち着くことができたのだろう。
「大丈夫だ。ちゃんと、決めた」
そう、うなずいてみせる彼の言葉に、きっと嘘はない。
けれど。だから。わたしたちも、その背中を預かる仲間として。わたしたちもうなずき返しながら、しっかりと彼の瞳を見た。
「……大丈夫って言葉は100%ではないと、ロイドさんが言っていました。絶対大丈夫だと言い聞かせたいから言うのだと」
「だが、安心するといい。我らは必ず、お前と共にいよう」
「あんたの強がりも全部、ちゃんと見届けてやるよ」
「だいじょぶ。ロイドは負けないよ」
「そうそう。暑苦しくてしつこいお前が、あの天使さまなんかに負けるかよ。らしくねーけどよ。こう見えて……なんつーの。ま、信じてるからな」
また途中で焦っても大丈夫。あなたを信じている。一緒にいる。
口々にそう言って、ロイドに笑いかけるみんなに、彼はまばたきをしたあと、なんだか照れくさそうに頬をかいた。
「みんな……」
「ロイド。胸を張りなさい」
「そうそう。ほら、ちゃんと背筋を伸ばして」
ほら、と姉弟に背中を叩かれて、しまらないなあ、と少し格好が崩れた顔の方が、とても彼らしい。
だからわたしも、首元よれてるよ、なんて言って彼の服を正して、ぺちんとその頬を軽く叩くように両手で包んで。それから、大丈夫だって、うなずいた。
「俺、戦うよ。あいつが過去と決別するなら、それに引導を渡すのは息子である俺の役目だ。みんなもいる。……絶対に勝つよ」
「うん。ロイドは勝つよ。絶対に」
みんながいるもの。
そう言って、手を離して。再び顔を上げた彼は、行こう、とただそれだけを口にして、昨日のうちに教えてもらっていた森の入口へと歩き出す。
トレントの森の入り口には、族長がいた。
きっと、見送りに来てくれたのだろう。彼はロイドを見ると、静かに目を伏せた。
「トレントの森へ行かれるか」
「ああ」
「クラトス殿は、伝説の鉱石アイオニトスを求めて世界中を探していた。もちろんここへもきた。なぜかおわかりか?」
「エターナルソードを人間でも装備できるようにするため、だろ」
「……あなたに装備させるためだ。しかし結局地上にはアイオニトスはなかった。デリス・カーラーンから奪ってくるしかなかった」
「……だからゼロスに取りに行かせたのか」
そうだ、とうなずく族長は、ただ静かにロイドを見つめている。
……彼は、決して勇者だった時代の彼らのことなんて、寿命的にも知らないだろうに。それでも、何かを期待するように。わたしたちの知らないクラトスさんのことを、ロイドに知っておいてほしいと願うように。
静かに、頬を緩めた。
「戦いが避けられるぬとしても忘れるな。……クラトス殿は常にお前たちの十人目の仲間だったのだということを」