136-2

トレントの森へ入るのは、わたしも初めてだ。
昔からある森だったけれど、入口にはいつも門番がいたし、よく採りに行った薬草が自生しているのは別の森だ。そもそも、他の森だって、こんな奥まで来たことはない。
だから、初めて、なのに。なんとなく懐かしい気持ちになるのは何故だろう。
この森の景色を懐かしいと思うのは、何故なのだろう。
そういう気持ちにさせる雰囲気があるのか、それとも、元の世界で見た森の写真や映像のそれに似ているのか。わからないけれど……やがてたどり着いた古い石碑の前に腰かける姿に、考えることは一度やめた。

「……来たか」

一言。ただそれだけ言って、クラトスさんは立ち上がる。
この石碑が、オリジンの眠る場所なのだろう。この前で戦って、彼を倒して……オリジンの封印を、彼の命をかけた封印を解く。
改めて対峙すると、なんだか体がすくむような気がした。わたしはまだまだ臆病で、目をそらしたくなってしまうけれど。
ロイドは、目をそらさない。静かにクラトスさんを見つめて、問いかける。

「どうしても戦うのか」
「……いまさら、何を言う。中途半端な覚悟では……死ぬぞ。オリジンの契約がほしくば、私を倒すがいい」
「それが……あんたの生き方なのか」

その言葉に、クラトスさんはとっくに覚悟をしているのだとわかった。
だからロイドもそれ以上は問いかけない。かわりにひとつ、大きく息を吸って。それから、落ち着いた瞳で、わたしたちへ振り返った。

「みんな。ここは俺に任せてくれ」

その提案に、驚きはあまりない。
むしろ、一番驚いているのはクラトスさんだろう。クラトスさんが強いことを理解しているはずなのに、一人で戦う気なのかと、目を見開いているのがわかる。

でも、わたしたちは動じない。わかった、と言って、みんながうなずく。
だって、ちゃんと朝、覚悟を見たもの。彼がちゃんと自分で立って、選んだことを、見ているもの。わたしたちがするべきは、彼を仲間として支えることだ。それは一緒に戦うことだけじゃない。選んだ選択を見守ることだって同じはずだ。そう思うから。

「……一人で大丈夫なのか?」
「ロイドは負けません。クラトスさんやクルシスが諦めたもの全てを、ロイドは背負ってるんだもの」

だから、わたしたちはコレットの言葉にうなずく。絶対に負けないと、信じ切った気持ちで二人を見る。
ロイドとクラトスさんは戦いやすいようにわたしたちから離れて、少しの間見つめあって。
そうして、それぞれに武器を構えた。