弾かれた剣を拾わず、膝をついたクラトスさんを見て、ロイドも剣をしまう。
お互いに肩で息をして、しばらく、無言で。
やがて口を開いたクラトスさんは、フ、といつものように静かに笑みを零した。
「……強くなったな」
「……あんたのおかげだ」
「とどめを……刺さないのか?」
「俺は、俺たちを裏切った天使クラトスを倒した。そして、俺たちを助けてくれた古代大戦の勇者、クラトスを許す。それだけだ」
はっきりと。そう言い切るロイドに、クラトスさんがわずかに目を見開く。
その表情を、ロイドはどう受け取ったのだろう。彼は少しだけ困ったように眉を下げて、そうして、本当はさ、と言葉を続けた。
「……本当は、ミトスにも同じ言葉を言いたかった。でも、それはできなかった。だから俺は、今度こそ言う。俺は、どんな人にも、ちゃんとこの世界で生きていてほしい」
「ロイド……」
戦って倒すべき相手は倒す。そのうえで、倒した相手にもここに生きていてほしいと、彼は強い瞳でクラトスさんを見る。
ミトスにも同じ言葉を言いたかった、と言う彼に、わたしもジーニアスも思わず彼の名前を呼んだ。そう思ってくれることが嬉しかったのと……自分たちが思っていたことを彼が言葉にしたことに、安心したから。
どんな人にも、この世界で生きていてほしい。
相手が誰であっても。戦っても。許せないと思っても。その人が頑張って生きたことを否定したくないし、ちゃんと生きて、ここにいてほしい。
……本当に。その言葉を、言えたらよかった。
「フ……ようやく、死に場所を得たと思ったのだが。……やはりお前は、とことんまで甘いのだな」
そう呟いて、クラトスさんが立ち上がる。
ふらりと、後ろにある石碑へと向き直った彼に、ロイドが慌てて手を伸ばした。
「ま、待て! まさか、封印を開放する気か!?」
「……それが望みだろう」
「それじゃあ、あんたが……」
目の前を一瞬光が覆って、彼の背中に羽が広がる。
青く透き通るその羽をいっぱいに広げて、クラトスさんの体から溢れた光が、石碑へと吸い込まれていった。