137-2

クラトスさんの体から溢れる光が石碑へと吸い込まれた後、彼はぐらりと大きく傾いた。
駆け寄ろうとするけれど、距離があって間に合わない。その体が地面に着こうとしたところで、どこからか現れた人影が彼を受け止めた。……ユアンだ。

「クラトス!」

ロイド駆け寄る間に、ユアンの体から光が漏れる。
それが優しくクラトスさんを包むように彼の元へと渡っていくのを見守って、ユアンはふうと息を吐いた。

「……私のマナを分け与えた。大丈夫。クラトスは……生きている」
「とうさ……クラトス。本当に大丈夫か?」

ユアンに体を支えられたままのクラトスさんが、ロイドの声にうっすらと目を開く。
よかった。どうやらユアンのおかげで、彼の命を失うことはなかったようだ。
安堵するわたしたちの視線を浴びて、けれどクラトスさんは、自嘲するように唇を吊り上げた。

「……また死にそこなったな」
「馬鹿野郎! 死ぬなんて、いつでもできる。でも死んじまったら、それで終わりだ」

零れ落ちた言葉に、ロイドが声を荒げる。
そんな彼に、きっとこの場で一番クラトスさんの気持ちがわかるだろうユアンが、問いかけた。

「生きて地獄の責め苦でも味わえと?」
「誰がそんなこと言ったかよ! 死んだら何ができる? 何もできないだろ! 死ぬことには何の意味もないんだぜ!」

その言葉は、くちなわさんにも言ったことだ。
死んでしまったら意味がない。生きていることに意味がある。死んでしまったら何もできないのだから……どうか、死なないでほしい。
どんな人であれ、死なないでほしい。この世界で生きていてほしい。そう願う言葉に、クラトスさんは小さく肩を震わせた。

「……そうだな。そんな当たり前のことを、息子に……教えられるとはな……」
「クラトス!」

小さく囁いて、クラトスさんは力が抜けたように首を傾ける。どうやら、どこか満足そうな顔のまま、意識を失ったらしい。
すぐに目を覚ますから安心しろ、とユアンは言うと、クラトスさんを抱えて少し引きずるようにして石碑の前から退く。
これからが本番だと。まだ、終わっていないと、そう言い聞かせるようにロイドを見て、うなずいた。

「クラトスなら大丈夫だ。お前はオリジンと契約しろ」

ユアンの言葉を合図にしたように、石碑が強い光を放ち始める。
その光が収まった頃……石碑の上には、四腕の男性の姿をした精霊の姿があった。