「オリジン……」
わたしたちの言葉の真意を見定めるように見つめていた目を覚ましたオリジンが次に目を向けたのは、今しがた自分の名を呼んだクラトスさんだ。
少し休めば平気、というのは本当だったのだろう。それまでもたれかかっていたユアンの手を借りながらも立ち上がる彼の体はしっかりしていて、先ほどの弱々しさはどこにも残っていない。
今なお、きちんとこの場で生きている彼は、オリジンをしっかりと見上げながら口を開いた。
「私は長い間、この世界を救うのはミトスの言う理想にすがるしかないのだと思っていた。かつてあなたがミトスの理想に共鳴したように、私もそれしか手段がないと思っていた。しかしロイドは違う。何かを変えるためには、自分が動かねばならぬことを教えてくれた。誰かの力に頼り、理想に共鳴しているだけでは……ダメなのだと」
だからどうか、手を貸してほしい。
手を貸すことを、現状を変えることを、自分で決めてほしい。
そう言外に含みながら見上げるクラトスさんに視線を返してから、オリジンは次にわたしたちへと目を向ける。
静かな瞳だ。静かで、綺麗な瞳。その瞳がわたしたち一人一人を捉えてから、最後に再びロイドを見る。
ロイドは相変わらず、ずっとオリジンを見上げていて、オリジンの答えを待っている。まっすぐで、強い瞳が、オリジンを見つめ続けている。
オリジンは静かにそれを見つめ返してから、思案するように目を閉じて。やがて、ふう、と息を吐いた。
「召喚の資格を持つ者よ。誓いを立てよ」
「オリジン! それじゃあ!」
その言葉が意味をすることを察して、ぱあっとわたしたちの表情が明るくなる。
オリジンは、契約を望んでくれる。わたしたちに協力してくれるのだ。
それが嬉しくて、安心して、思わず隣にいたジーニアスと顔を合わせて笑った。
「今一度、人を信じてみよう。お前が言った、誰もが等しく生きられる世界のために、私も自ら動く」
さあ、誓いを。
そう手を差し伸べたオリジンに、しいなはひとつ、深呼吸をする。
そうして、ロイドに負けないくらいまっすぐで、強い光を宿した瞳で、オリジンを見つめた。
「契約者しいなの誓いはただ一つ。自分が自分らしく生きられる世界を……誰かが無意味な死の犠牲にならない世界を取り戻す! それだけだ」
力強く、はっきりと答える彼女に、オリジンはどこか満足そうにうなずく。
「契約者しいなよ。そしてロイドよ。お前たちに、私の力を預ける。……それを使って、エターナルソードをすべての命ある者を救う剣とせよ」
オリジンの手に、光が集まる。
やがてその光に溶け込むようにオリジンの輪郭がぼやけ、ひとつの小さな光となって、しいなの手へと降りた。
「しかしエターナルソードはミトスとの契約のまま、エルフの血をひくものしか使えない。お前自身の力で使いこなし、あの剣とお前との間で、もう一度新しい理を引くがいい」
彼の言葉と共に、光が収束して、その手のひらに指輪が現れる。
精霊との契約の証。契約の指輪が、しいなの手のひらできらりと瞬いた。