139-2

「わたしは、君と一緒にいたい」
(どうして)

あと少し。もう、あと一歩。
ついに姉さまが目を覚まそうと言うその時に。
わざわざ牢から飛び出してきてはそう言い切る彼女に、どうしてと胸が痛むのを無視することはできなかった。
その言葉がどれほど魅力的かよくわかっている。全部放り出して彼女のもとへ行けたなら、どれだけいいだろう。彼女は言葉通り、きっとずっと一緒にいてくれる。そう思ったら、目を合わせることなんてとてもできなかった。

その言葉に、うなずけるわけがないだろう。
だってそれは、姉さまを諦めると言うことだ。
そんなことはできない。絶対に。
だからもう同じ道は歩けない。そう覚悟している。覚悟して、でもせめて、戦いたくないと言ってくれた彼女の願いを叶えたくて、引き離した。まさかそれすら振り切って、ここに来るとは思わなかったけれど。
でも、その手は取らない。目は合わせない。だって今ここで手放せば、彼女は自分を裏切ったことにはならない。ナギサだけは自分を裏切らない。その言葉が本当になるなら、もうそれだけでいい。そうしたら、後できっと、姉さまと三人で一緒にいられる。

そう決めて、彼らに正体を明かしたのに。全部茶番だって突き放して、ここに来たのに。
だめだった。この甘い光の世界に引き摺られて怪我なんてするし、ジーニアスへの攻撃をためらってしまうし。さんざんだ。うまくいかない。思った以上にあの場所に執着をしていた自分に驚いて、嫌になった。
いっそ裏切ってくれたらいいのに。信じてくれなければよかったのに。ナギサは今もまだボクを見ている。まっすぐな目で、強い光を宿した目で、一緒にいたい、だなんて言う。

相変わらずだ。彼女は選ぶのが苦手な臆病者のくせに、変に頑固で。決めたならもう最後まで貫かなくちゃって頑張ってから回って、馬鹿みたいなのに優しくて。戦いたくないって泣いたのにここまで来る。
ひどいな。せっかく戦えないようにしたのに。
ひどいな。ボクだって。ボク、だって。

(でもボクは、選べるんだ)

これまでずっと、選び続けてきた。
ボクはもう、キミ以外の人を選べる。姉さまだけを選ぶ。
ううん、選ばないといけない。そうでないと、ここまでボクが選び続けてきたことの意味がなくなってしまう。そんなことは耐えられない。たとえ彼女がこの先ずっと一緒にいてくれるとしても、耐えられるわけがない。
そして、後悔もしていない。間違えているのかも、と心は揺らいだけれど、後悔はしていない。

だからボクは選ぶよ。最後まで選ぶ。
これが、選んできた道だから。立ち止まるとしたら、それは新たな英雄に打ち倒される時だ。それまでは絶対に立ち止まるわけにはいかない。積み上げてきた屍がそれを絶対に許さない。中途半端な許しも救いもいらない。そんなものは望んでいない。欲しいのは、求め続けてきたのは、大好きな姉さまのいる世界だけなのだから。

この輝石が砕かれるまで……ボクが、ボクである限り。
ボクは絶対に、姉さまをあきらめるわけにはいかないんだ。
たとえ、その手を取った先に、泣きたくなるくらいに優しい、ボクが望んだ世界があったとしても。友達も好きな人もいる愛おしい場所があったとしても。

……キミを。選ぶわけには、いかないんだ