すう、とミトスくんの体が消えて見えなくなる。
どこかへ行ってしまったのだろうか。それとも、すごく疲れていた様子だったし、輝石の中に眠ってしまっているのだろうか。
わからない。自然と手が胸元を撫でる。硬い感触。輝石がまだそこにあるのを指先で確認して、わたしは、は、と小さく息を吐いた。
「ナギサ! 無事だったか!」
「……うん」
「この馬鹿、心配かけさせて! 大丈夫なのかい?」
「怪我は……なさそうです」
よかった、と駆け寄ってきてくれたみんなになんとか笑顔を返して、どこにも不調がないか確認するようにぴょんぴょんとその場で跳ねてみる。
さっき、ミトスくんはすごく苦しそうにしてたけど……今は、全然苦しさとかないな。気持ち悪いとか頭が痛いとか、そういった不調もないし、体の動きに違和感があるわけでもない。試しに軽く素振りをしてみたけど、やっぱり問題なさそうだ。
じゃあ、さっきはなんであんなに苦しそうだったんだろう。疑問に思いながらも、わたしは問題なさそうだと笑った。
「体に不調はなさそうだな」
「そのようね。顔色も悪くなさそうだわ」
「ま、あいつがナギサちゃんに危害を加えるわけもないか」
ひとまず安心だな、と笑いかけてくれたゼロスくんにうなずいてから、でも、と再び輝石に手をやる。
うん。やっぱり、取れそうにない。ひっかいても引っ張っても、輝石はそこから動かない。
「輝石、とれないみたいだね」
「うん……でも、それだけみたいだし、今は心配ないかな」
このままもらって帰ってもいいよ、なんて冗談ぽく言えば、おいおいとゼロスくんが今度は呆れるのが見えたけれど、半分くらいは本気だ。
別に、これがここにあるのは、構わない。体もおかしいところはない。ただ、先ほどまでずっと触れてしまった記憶とか、喧嘩したこととか……そういうことを思い出すと、胸の奥が重くなるのは本当、だ。
今、こうしてみんなと合流できて、安心して。そのせいで……彼の覚悟が。記憶が。決意が。全部、見えてしまったことを再認識してしまったから。
「……行こう。大いなる実りも全部、この先だよ」
ぎゅっとこぶしを握って、階段の先へと視線を向けた。
大いなる実りが、この先に動かしてあることを知っている。そしてきっと、そこには、本当のミトスくんの体もある。
そしてきっと。もう、戦うことは避けられない。
だって、わたし、さっき、知ってしまった。彼の言葉を聞いてしまった。彼の記憶を見てしまった。彼の覚悟を、理解してしまった。戦うことが、見届けることが……わたしにできるせいいっぱいのこと、だ。
だからわたしは最後の決意をしようと、その輝石を撫でた。