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「リフィルさんが再びここに来てくださって助かりました!」
「あの素晴らしい舞を見た観光客たちが、どうしてもあの舞をみたいと言っていて……」
「彼女ほどの舞い手はいません……!」

ピクニックを終えた後。プレセアちゃんと別れて、これからジーニアスと一緒に世界を巡る旅に出るというリフィルさんを迎えにアスカードまで来たところで、わたしたちはそろって苦笑を浮かべた。

あの石舞台の上にあるのは巫女服を纏って踊るリフィルさんの姿だ。
そして、彼女を囲み熱いまなざしを向ける現地の人とたぶん観光客。以前、再生の旅で踊った際も多くのファンを手に入れていたけれど、どうやらまた増やしたようだ。
まあ、間違いなく美人だし素敵な人だもんね、とジーニアスと顔を見合わせていれば、舞を終えたリフィルさんがこちらへと歩いてきた。

「二人とも。もう来ていたのね」
「ついさっき着いたとこ。姉さん、また巫女やってたんだね」
「ええ。なんでも、世界が再生されたから、何かしたかったのですって」

リフィルさんが着替えに行くと言うので、そろって彼女の服が置いてあるという宿へ歩き出す。
相変わらず町を吹き抜けていく風に髪を揺らしながら、リフィルさんは乱れていた弟の髪を撫でるように整えた。

「二つの世界が統合されて、急な環境の変化に驚きも戸惑いも多いけれど、それでも、世界が平和になったことは事実よ。世界再生は為された……教会もそう宣言したからこそ、居ても立っても居られないのでしょうね」

本来ならきっと、世界中で宴を催していたでしょう、と笑ってから、リフィルさんがわたしを見る。
そうして、どことなく寂しそうに。けれど、優しい表情のままわたしの名前を呼んだ。

「……この後は、大樹のところに?」
「はい。そういうのなら、たぶん持っていけるかなって」
「そうね。残念だわ。本当に持っていけるのか、ぜひ私も確認したかったのに」
「じゃあ一緒に行きますか?」
「とても魅力的だけれど、無理そうね」

その返事はわかりきっていたので、残念だなあと冗談めいた声で笑みを返す。
彼らはこの後、世界を旅するのだ。わたしと同じ場所に行くはずはない。ううん、それだけが理由じゃない。
それを証明するように、リフィルさんは力強く、前を向いて、まっすぐに笑った。

「ここが、私たちの生まれた世界で、生きていく場所だもの」


わたしたちは、生きていく。
生まれた場所で、生まれた自分で、生きていく。
それは当たり前のことで、とても難しいことで、とても大切なことだ。
彼が、できなかったことだ。
だから、わたしも……生きていかなくちゃ。
自分の、世界で。