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次に目を開いた時。
最初に見えたのは、見慣れない真っ白な天井だった。

「夢じゃないんだなあ……」

思わずつぶやきながら眺める白い天井は、この数日ですっかり見慣れてしまった病室の天井だ。
無事に元の世界に帰還したわたしだけれど、どうやらこの世界ではどこかから落ちてきた何かをキャッチする際に強く頭を打って、二週間ずっと意識を失っていた、らしい。
うーん、意識不明の重体。向こうで過ごしたのと同じ二年が経過していたわけではないことが救いだろうか。どちらにしろ多方面に迷惑をかけていたので、あまり意味はないかもしれない。
まあでも、二週間も意識不明だったんだし、仕事に関して何もかも忘れていても仕方ないよね、という言い訳がたったのでよしとする。こんな前向きのなり方は、教わってないけど。
でも、夢じゃないって、知ってるから。

視線をずらして、見舞い品や当時の所持品やらが置いてある棚を見る。
そこに大事に畳まれて置いてあるのは、あの帯だ。
ミトスくんとマーテルさんにもらって、ロイドたちとの旅でずっと使っていた、あの帯。
しかも折りたたまれたその帯の間には、帰るまでの間に作ったお守り袋が挟まっていて、その中にはあの大樹の葉が入っている。

もちろん、どちらもあの世界に行く前は持っていなかったのだ。
いったいどこから出てきたのやら。体は間違いなくあの日の続きなのに、記憶も持ち物もシルヴァラントとテセアラの旅路が夢じゃなかったことを教えてくれていて、胸の内側がくすぐったいような気持ちだった。
たぶん、寂しい気持ちもある。本当に帰ってきてしまったんだって、今さら寂しくなって、惜しくなっている。もう二度とあの世界には行けないだろう。ミトスくんを見送った時のような、いろんな気持ちが溢れてきて、泣いてしまいたくなる。
でも、ちゃんと生きなくちゃ。わたしの世界で、ちゃんと胸を張って。そうしたら……世界は違うけれど、いつか君に胸を張って会える気がするから。

「……頑張るよ。わたし、ちゃんとここで、生きるからね」

二週間寝たきりだったから筋肉が固まってしまっているとかなんとかで、なかなか上手に身動きできなかったり、日本の文明社会を忘れて頓珍漢なことを言ったせいで検査が増えたりと、まあいろいろと事件は起きるのでそんな簡単に物事は進んだりしないけれど。
それでも、心配してお見舞いに来てくれた人と話したり、もう懐かしくなってしまったいろんなものと再会に、やっぱり嬉しくて安心する気持ちもあって。
なんだかんだ、わたしが生きてきた世界はやっぱりここなんだよなあ、なんて思った。