ルーンクレストの材料で、現在わたしたちの手にないのはマナリーフ、ジルコン、マナのかけらの三種類だ。
ジルコンはリーガルさん曰く、以前レザレノ・カンパニーで取り扱っていたものらしい。ジルコンに関する資料と在庫の保管場所が、本社に行けばわかるはずだろう、というリーガルさんの答えにあわせて、地図上のアルタミラに印をつける。
マナリーフはヘイムダールにあるはずだと、リフィルさんが言った。幼い頃に聞いたことのある霊草だとのことだ。ヘイムダールにいい思い出はないけれど……まあ、行かないなんて選択肢は、存在しない。現在の地図上に存在するヘイムダールの位置に印をつけて、ちょっと複雑な気持ちで小さく息を吐いた。
一応、以前に人間との間にいざこざがあったせいで、現在は国王の許可証がないと入ることもかなわないらしいけれど、これはヒルダ姫になんとかしてもらおう。国王はもう誰とも会いたくない、と言っていたけれど、許可が必要なのだから仕方がない。
そして最後のマナのかけらは、いまいち何を言っているのかもよくわからなかったけれど……神子たちが暗唱した経典曰く、デリス・カーラーンに……クルシスにあるだろう、という推測を立てた。
これだけは少々曖昧なうえに、あるだろう、と思われる場所が敵の本拠地というとんでもないところだけれど。基本的に聞いたことのない名前であるし、マナの塊であるというデリス・カーラーンの説明を思えば、ありえない、というほどでもないだろう。
それでも危険が伴うのは間違いないし、他の場所で新しい情報を手に入れられるかもしれない。ここは最後に向かうことにしよう、ということで、まずは国王から許可証をもらって、一番情報がはっきりしているアルタミラへ移動することとなった。
「……ようやく、積年の思いを果たしたのだな……」
アルタミラへ向かう途中、わたしより少し前の方でリーガルさんがそう呟いたのが聞こえた。
話していることは、きっとヴァーリを倒したことについてだろう。あの時は早く国王に毒について伝えようとか、まだ先も方法も見えない状況で急いでいたから、アリシアさんが死んでしまう理由を作った彼を討ったことについて、じっくりと考えることができなかったのだろうけれど……今は少し心に余裕ができて、じんわりと己の復讐が終わったことを実感しているのだろう。
伝え聞いたアリシアさんの最期を思い出して少しだけ悲しい顔を作ってしまうと、リーガルさんが少し申し訳なさそうに目を伏せた。
「すまない。まだまだ課題は山積みだというのに」
「いえ。……いえ、山積みだからこそ、前進したことが大事なんですよ」
わたしこそ変な顔をしてすみません、と言うと、隣にいたプレセアちゃんがじっとリーガルさんを見上げる。
同じように、復讐を終えた彼女は何かを確かめるように、静かに彼に問いかけた。
「……リーガルさんはこれからどうするんですか?」
「我が復讐に付き合ってくれたロイドたちのためにも……アリシアのためにも、クルシス打倒に協力する。私の力は微々たるものだが……」
「……そうですね。ヴァーリを倒して……それで、すべてが終わったわけではないですね」
「むしろ……始まりなのかもしれぬな」
「始まり……?」
「過去から……未来へ目を向けるための始まりだ」
これ以上、立ち止まってなどいられぬな、と首を振るリーガルさんに、プレセアちゃんは自分の胸にそっと触れる。
終わったこと。まだ終わっていないこと。これから始まること。それらを考えるように目を閉じて、そうして再び決意に満ちた瞳で前を見て。必ずコレットを助けよう、と二人がうなずきあった。
……新しい、未来のために。そうだね。その未来に、コレットも絶対に、生きていていないと嫌だもんね。わたしも立ち止まってなんていられない。できることがどれくらいあるかはわからないけれど……少なくとも、ヘイムダールに行くの嫌だなあ、なんて言っている場合じゃない。
というか四千年前に追放されたのって、まだ続いているのかな。寿命的にあの時子供だった子もぎりぎり生きていないと思うんだけど……うーん、追放者リストなんてないとは思うけど、入ったら怒られるのかな。
未来へ向かうための決意をいまいち決めきれないでいる己の情けなさに、苦笑いするしかなかった。