それは、移動途中でお昼休憩をしていた時だった。
「リフィルさん。……ちょっと、体調悪かったりしますか?」
「……いいえ。なんでもなくてよ」
どうにも食事の手が進んでいないと言うか、ちょっとぼんやりとしているというか。本調子ではなさそうなリフィルさんの様子に気付いて問いかければ、彼女はやっぱりなんでもないと首を振る。
けれど、指摘したところで食事は進まない。遊ぶようにスプーンを持ち替えるだけの彼女をじと、と見れば、先ほどより少しだけ焦った声でなんでもないと背筋を伸ばした。
「本当です」
「嘘ですね」
「……もう」
はあ、とリフィルさんはため息を吐いて、ちらりと他のみんなを見る。
キャンプをはったところの近くで、けれどそれぞれ思い思いの場所に座って食事をするみんなは、わたしたちのやり取りに気付いていない。
それを確認してから、彼女は少しだけ声を潜めた。
「確かに、本調子ではないわ。けれど、今日の夜にちゃんと休めば平気です」
「うーん……じゃあ、ここから近いし、アルテスタさんのところに行きましょうか。その方が野宿するより休めますし」
リフィルさんの体調が悪そう、ではなく、アルテスタさんにルーンクレストを作ってもらうことになるから事前に心構えをしておいてくださいって伝えに行こうと言えば、彼女の不調を隠したうえで、みんなはうなずいてくれるだろう。
そう提案すれば、一応文句は出てこなかったらしい。それでも自分のために足を止めることになってしまうからと、リフィルさんは眉をひそめた。
「今は急ぐ旅だと、わかっていて?」
「もしこれでリフィルさんが倒れたり怪我をしたりして、コレットがもう自分のことなんていいー放っておいてほしいーって言い出したらどうするんですか」
いつだって誰かを優先する彼女のことだ。自分のために誰かが苦しむくらいならと、こう言いだすのは簡単に想像がつく。
もちろん、それは彼女の担任教師として長年接してきた彼女の方がよくわかっているだろう。ふう、と肩をすくめると、降参です、と首を振った。
「……誰かを大切に思うなら、まずは自分を大事にしろ、ということね。まったく。あなたも口がうまくなったわね」
「わたしの成長はすべてみんなの影響ですよ」
「ふふ。そうね。お互いに影響を与えあえるのは、いいことだわ」
私たちもまだまだ成長途上ね、と笑うリフィルさんは、やっぱりあまり顔色がよくなかった。