マナリーフはラーセオン渓谷にいる語り部からもらうといい。
そう言われて、通行証でもある族長の証である杖を預かって戻ってきたみんなと合流して、その渓谷へ向かう。
その間、今のヘイムダールについていろいろと聞いたけれど……基本的に、わたしが知っているそれと変わらなさそうだな、と感じて、改めてエルフにとっての時間というものの進み方は、ものすごくゆったりとしているんだな、と思った。
「病気の名前を聞いたとき、族長がすごく驚いてた。マーテルの……なんとかって、言ってた。クラトスもその件で何か来ていたみたいで……詳しくは教えてくれなかったけど」
「勇者ミトスの話もあの村では禁句なんだって」
……それは、彼らがハーフエルフであることを知っているから、なのだろうか。
もしそうだとしたら、悲しいな。あそこは二人にとって、間違いなく故郷なのに。
ちょっとだけ視線が下がってしまったことに気付いたのだろう。ロイドは自分の方が苦しそうな顔をして、ああもうっと叫んだ。
「なんか、いろいろむかつくなあ、エルフの奴ら!」
「仕方ないわ。彼らにとって私たちは忌むべき存在だもの。勇者ミトスについても、彼らがハーフエルフであったことを知っているのでしょう。四千年の時は生きられずとも、当時のことを、聞き伝えられる程度には、代替わりもしていないでしょうし」
「でも! 半分は同じ血が流れているのに!」
「だからだよ。なまじ自分に近い奴だから、可愛さ余って憎さ百倍。骨肉の争いなんてのは、そんなもんだぜ」
それは教皇も同じだっただろ、と表情を歪めるゼロスくんに、返す言葉が見つからない。
自分と同じ血が流れているはずなのに、確かに違う生き物だとわかってしまうから……だから、遠ざける。人間はその寿命の違いに怯え、エルフは、自分たちより起伏の激しい感情に自分たちを乱されることを嫌う。
同じなのに。同じじゃない。
それは、どうにもできないことなのに。
どうにもできないからこそ、みんなが気にしてしまう。
「ま、結局ここも、人間と同じなんだろーよ。自分の違う者は気味が悪い。ましてエルフなんてのは、誇り高い生き物だからな」
自分と違う生き物を遠ざけることは、人間と同じだ。種族は違うのに、同じ考えをしている。でも……そのことを知る人は、きっとそんなにいないのだ。
こんなにそっくりなのに、あいつらは違う種族だから同じはずがないって、きっとどちらも思っている。
昔、わたしのことを人間だというだけで毛嫌いしたエルフもそうなのだろう。同じ生き物だと思えないから、自分と近しいものを見つけられないから。理解できないから、嫌って、遠ざけて、理不尽なことをぶつけてきた。
でも……そんな彼だって、あの里では少し浮いていて。同じ種族の中でも、壁というものはあって。差別や区別は……同じ種族の中でも、生まれていた。
「結局、考え方の違いなんだよね。理解できないから、自分と同じじゃないから……だから、遠ざける」
「……考え方が違うのは当然なのにな」
それでも、生きていることは、同じなのに。
そう悲しそうに呟くロイドが、そうやって悲しんでくれることが……きっと、みんなが一緒に考えないといけないことなんだろうなと、思った。