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セレスちゃんも王都にいるのかと思ったけれど、どうやらあまり体が丈夫でないということで、南の孤島にある修道院で暮らしているらしい。神子の血族が一か所に固まっているのもよくないからな、と語る彼は、どうにも様子がおかしく感じる。
何が、とは、わからないのだけれど。なんだろう。プレセアちゃんも何かが引っかかっているようでしきりに首を傾げていた。

「セレスか〜……あたし、あの子苦手なんだよね」

そんな時だ。しいなががっくりと肩を落としながらそうぼやいたのは。
会ったことがあるの、と聞けば、前にちょっとね、と答えてくれる彼女に、けれどわたし以上にゼロスくんが驚いたようにこちらへ寄ってきた。

「お、ありゃ、お前たち、会ったことがあんのか?」
「ああ。いつだったか、あたしの後を付け回す奴がいてさ。捕まえてみたらセレスだったんだよ」
「そりゃまた行動派なお嬢さんだね」

セレスちゃん、体が丈夫でないってさっき聞いたばかりなんだけど。
まあ、文武両道、という情報もあったから、つけ回すくらいはできるのかもしれないけれど……わざわざ孤島から出て、ミズホの民であるしいなを見つけて、となると、ちょっとイメージが変わるくらい行動派な印象を受ける。

「セレスがお前を? なんで?」
「こっちが聞きたいよ。お兄様を惑わす雌猫、覚悟〜! とか叫んで、いきなり切りかかってきたんだ。ま、返り討ちにしてやったけどね」

しきりに不思議そうに話を聞いていたゼロスくんが、そこまで聞いたところで、あ〜……と声を零す。
たぶん、どうして彼女がそんな行動をしたのか考えているのだろう。やがて納得したように手をぽんと叩くと、ははっと笑った。

「あー、それはあれだ。あいつ、お前のこと俺さまのスイートハニーだと思ってるんだな」
「ど、どこをどうしたらそんな勘違いになるんだよ!」
「俺さまがあいつにそういったから」
「あ、あんたのせいじゃないか!」

思い切りしいながゼロスくんを殴るけれど、まあ、これはゼロスくんが悪いと言うことで、わたしは特に止めない。
彼、ロイドのことをあちこちでハニーって紹介しているところでもわかるけど、そこに恋愛感情がなくても懐いている相手なら、そういう風に紹介する傾向がある。しいなとは腐れ縁みたいな関係らしいし、その時も同じだったのだろう。ただ、セレスちゃんはそれを真に受けてしまった、というところか。
そこまで考えてから、あれ、と思う。つまり、ゼロスくんの冗談が通じないくらいに真面目で、でもしいなを探せるくらいには、情報収集も得意で……

「……そんなお兄様大好きそうな子のところに一緒に行って、大丈夫なの?」
「大丈夫って、何がよ?」
「ゼロスくん、ロイドのことハニーって言い回しすぎて、屋敷内どころかお城でもハニーって言われてたけど……」

少しの間、わたしたちの間に無言が流れる。
ゼロスくんも同じことを想像したのだろう。いやいや、と頬を引きつらせた。

「さ、さすがに、男相手だし、勘違いしねーだろ……」
「そ、そうかな……あ、セレスさんの前で懐いてこないでね」
「すごい対策するじゃん。俺さま寂しい〜」

失言には気を付けます〜とこちらにもたれかかってくる彼を引きずりながら、目的地へと足を進める。
セレスちゃん、どんな子なんだろうな。