───わたし、どうしてこんな場所に来てしまったんだろうって、思ってたけど……なんとなく。なんとなく、そうだといいなって、だけだけど……二人と出会うためだったのかな、なんて思ったよ
それはかつて、わたしがマーテルさんとミトスくんに言った言葉だ。
異世界なんてところに突然飛ばされて、右も左もわからなくて。それでも迷惑はかけないようにと思ったのに、結局迷惑をかけて。厄介者でしかないわたしのために立ち上がって手を差し伸べてくれた二人のことが好きだって言ったら、泣いてしまった二人を見て、そうだったらいいなって、言った言葉。
その言葉に嘘はない。あの時はもちろん、今、二人から離れてしまった今だって。あの時代にわたしが一瞬でも現れたのは、二人と出会うためだったらいいなって思う。それは、あの二人のためとかじゃなくて、わたしが、二人のことをずっと心の支えにしているからこそ、思った言葉だ。
……でも。ミトスくんの隣にいることを、選べないんだ、わたし。
ミトスくんのいる部屋から追い出された後、出口はこちらだと言われるままに歩きながら、わたしはぼんやりと昔のことを思い出す。
二人と一緒に過ごした日のこと。あの時も、小さな差別はたくさんあったけれど、それでも前を向いて暮らしていた。三人だったらどこへでも行けるね、なんて笑ってくれる二人のことを守りたくて、今までだったら頑張れなかった勉強とか体力つくりとか頑張って。わたし、こうやって変わることができるんだなって、驚いた。
───……優しくしたら、優しくしてもらえると思っていたの
───ずるい考え方だな、って、思っていたけれど……やめないでよかったわ
優しくしたいと思って、優しくできる彼女が好きだった。彼女のこと、守りたかった。
そうだね、わたしたち、本当にマーテルさんが好きだった。だから、死んでしまったらすごく悲しい。もしも生き返らせる方法があるのなら、その方法を探したかもしれないくらい。
ううん、絶対に探した。彼女には絶対に幸せになってほしいって、絶対に思った。
旅をして、戦争を終わらせて。病気になったりもして。それでもまだ優しく微笑んでいただろうマーテルさんが、殺されてしまうところを見てしまったら。
わたしも、絶望したかもしれない。すべてを恨んだかもしれない。
ここまでして世界を救う意味があるのって、叫んだかもしれない。
何千年かけてでも彼女にもう一度会いたいって。そう願って。人間でなんていたくないって……天使になることを、選んだかもしれない。
そう。わかってしまうの。彼の気持ちも。
だからわたし、今、ものすごく途方に暮れている。
どうすればいいんだろう。彼の話を聞いてから迷いたいとは思った。でもね、違うの。迷っているけれど、迷っていないの。だってわたし、もう、こうしたいっていうことは決まっていて。そのためにここまで走ってきたんだってわかっているから。今さら変えられないよって思っているの。
でもね、でも、それを選ぶと。このまま走ると。わたし、一番最初に大事にしたいって思ったものを手放すことになるとわかっているから。だから、それが嫌で、どうしたらいいんだろうって、思っているの。
欲張りなの。強欲なの。でも、どうすれば両方手に入れられるかわからない。
わからない。
ここで、突っぱねてくれていればよかったのに。もうお前なんか知らないって言ってくれたらよかったのに。
裏切られるくらいなら味方にならなくていいとか、どこにも行かないでとか。生きていてとか、そんなことを言うから。だから、わたしも彼のことを完全に切り捨てられなくて、ぐちゃぐちゃしてくる。
ふと、前を歩いていた天使が足を止めた。
どうやらこの先にあるワープ装置から、救いの塔のあの祭壇のある場所まで飛べるらしい。
天使はそう言って、事務連絡だけをして再び口を閉ざす。今みんなはどうなっていますかと聞いても答えてくれない。あくまでわたしをワープ装置まで移動させるという命令だけを受けて、それだけを主目的にして動いているのだろう。すぐにどこかへ行かないのは、ちゃんと無事にわたしがワープ装置を通ったかを確認するためだ。
それを命じたのはミトスくんかな。そうやって心配してくれるんだ。
でも、一緒には、いてくれないんだね。
違うか。……わたしが、選べないんだ。
ワープ装置に足を置きながら、わたしは結局、何も決めることができなかったな、と。遠くなる景色にうつむいた。