声がする。
「起きて、ナギサ。起きて」
「ん……?」
誰かに揺り起こされる感覚がして、わたしは重たいまぶたを持ち上げる。
なんだろう。全然眠気がとれない。すごく眠くて、怠くて、頭も痛い気がする。いつもは疲れているのもあって、結構さくっと眠って、よほど早起きでない限りはさくっと起きられるのに。どうしたんだろう、と思いながらも、わたしを起こそうとする声に導かれてゆっくりと頭を上げた。
まだぼんやりする。誰に起こされたんだろう。夜中のトイレなんて付き合わないよ、と言おうとして……わたしを起こした本人が、おはよう、とどこかのんびりとした調子で笑うのが見えて。はっと、急に意識が覚醒した。
「……コレット!? もう、起きて大丈夫なの!?」
「うん。大丈夫だよ。ほら」
わたしを起こしたコレットは、にこにこと笑いながら力こぶ、なんて言ってこぶしを握り締める。それから、ちょっとだけ照れくさそうに肩のあたりの服を寛げてくれて。その下にある肌の様子を見せてきた。
明かりのついていない今の部屋では、どうしても外から入ってくる月明かりしか光源はないけれど……でも、十分だ。見えた肌が、何も特徴のない、ただの女の子のそれだって、ちゃんとわかる。
恐る恐る指先で触れて見ても同じだ。ちょっと柔らかくて、あったかい。本当にちゃんと治ったんだ、と改めて実感して、わたしは思わずコレットを抱きしめた。
「よかった……」
「うん。助けてくれて、ありがとう。本当に……ありがとう」
ぎゅう、と抱きしめ返してくれる彼女の声は、少しだけ濡れている。そうだよね。泣きたいくらい安心したのは、コレットだよね。
ずっと不安だった病気が治って、一番嬉しいのはコレットだ。わずかに震える体に気付いて、わたしはそれすらなんだか嬉しくなってしまって。よかった、本当によかった、と繰り返しながら頭を撫でる。くすぐったいよ、なんて笑う声が、心地良い。ちゃんとわたしの感触が彼女に伝わっている。彼女がちゃんと生きている。
それだけで……それだけで、わたしまで泣いてしまいそうなほど、嬉しかった。
「……えっと、それで、どうしてみんな、こんなところで寝てるの?」
しばらく抱き合った後で、コレットが不思議そうにそう問いかけてくる。
え、と彼女から少し体を離して部屋の中を見ると、確かにみんながぐっすりと眠っているのがよく見えた。……この部屋に、ベッドなんてないのに。
ベッドどころか、明らかにみんな、ご飯を食べている途中で力尽きた、とばかりの寝方をしている。ある人は床に寝そべり、ある人は机に突っ伏し、なんだったらスプーンを握りしめたままの人もいる。というか、
でも……みんな、本当に寝ているみたいだ。口元に手を近付けてみたけれど、すうすうと規則正しい寝息が手のひらに触れるし、みんな苦しそうなわけでも、熱がある様子もない。本当に、ただここで、みんな寝ている、だけ。
……そういえば、ご飯を食べている途中で、眠くなってきたんだっけ。
ちょっと前にロイドもそう言って部屋にベッドへと移動したから、わたしもそうしようかなあ、とぼんやり考えて。そのうち、隣で食べていたジーニアスがうとうとし出したのを見て、ミトスとリフィルさんで仕方ないわねえと笑って。
でも……でも、彼のことを運ぶ前に。こてん、と。わたしの方が寝てしまった、ん、だったような。意識がそこで途切れているので、眠ってしまったことは間違いないと思うんだけど……
「……お、おなかいっぱいになったから……じゃ、変だよね……」
「それに、誰か外で話してるみたいで……たぶん、ロイドの声……」
「う……うわぁーーーーーー!!」
どうしてみんなでここに寝ているんだろう、と考えている間に、外から悲鳴のような声が聞こえてくる。
これは、ロイドの悲鳴だ。
思わずコレットと顔を見合わせてから、わたしたちは急いで外に飛び出した。