「どうしたんじゃ……!」
騒ぎに気付いたらしい、アルテスタさんとタバサちゃん、リフィルさんとジーニアスとプレセアちゃんが家の中から飛び出してくる。
そして、みんな目の前の光景が信じられないとばかりに大きく息を飲んだ。それはそうだ。周りには倒れ伏した人ばかり。この中で立っているミトスは異様な様子であるし、戸惑わない方がおかしい。
おかしいのに。その中で、ジーニアスだけは驚きではなく、悲しそうな表情を浮かべて、ミトスを見ていた。
「ミトス……っ! ……やっぱり……」
「……やっぱり? やっぱり信用できなかった?」
ジーニアスの言葉に反応した声は寂しそうに聞こえたけれど、彼に振り返ったミトスは、決して悲しそうな表情などしていなかった。
「正解だね、ジーニアス。ボクもお前なんか信じてなかったよ!」
彼の手がジーニアスへ向けられる。けれどすぐには魔術を発動させず、そのまま隣にいたプレセアちゃんへと手のひらがスライドした。
光が集まるのを見て、プレセアちゃんが身構える。
「きゃ……!」
「うおおおおお!」
ミトスが放った光は、プレセアちゃんを庇うように走ってきたアルテスタさんへと直撃する。
勢いをつけて走ってきたせいもあるのだろうか。彼は壁にのめり込むように吹き飛ばされてしまって、そのまま動かなくなる。慌てて近くにいたコレットが駆け寄ってリフィルさんを呼ぶけれど、彼女も驚愕のせいで早く動くことができない。
「ミトスサんは……私を……助けてくれまシた」
「う……うるさい!」
「ミトス……タスケテ……クレ……マシタ……ミト……ス…」
主人を助けるために、ミトスを止めようとしたのだろうか。語り掛けたタバサちゃんだったけれど、彼は聞きたくないと訴えるかのように彼女のことも吹き飛ばす。
明らかな動揺が見えたのは、彼女がマーテルさんに似ているからだろうか。
そのまま、タバサちゃんは壊れたように音を長く発した後、ぷつりと音を途絶えさせた。
「なんてことを……! あなたは自分を犠牲にして、タバサを護ったのに!」
「どうして! どうしてだよ、ミトス! なんでタバサやアルテスタさんを傷つけるのさ! あんなに仲良くしてたじゃない!」
ジーニアスたちの問いに、ミトスはぐっとこぶしを握る。
怒りにも似た何かを宿したその目は、動かなくなったタバサちゃんに向けられていた。
「タバサ! 不気味なほどボクの姉さまに生き写しの、あの人形! ずっと気に入らなかった! あいつは姉さまの心を受け止めきれなかったできそこないの器だ!見るだけで反吐が出る!」
知っている、似ているなんて、知っている。
タバサちゃんの姿を見て、泣きそうになったから、わたしも知っている。
でも、でも。
どうして彼がみんなを傷付けるのかは、よく回っていない頭では、上手に考えることができなかった。