117-2

翌朝、護衛についていったみんなが戻ってきたのを見て、ロイドが駆け寄っていく。
アルテスタさんの容体はどうなのだと問いかければ、なんとか無事だと聞いてほっと息を吐いた。今はミズホの民が護衛として張り付いているとのことだし、もう問題はないだろう。
ゼロスくんの言葉を聞いてそっと頬を緩めたロイドは、それからすぐに表情を引き締めると、みんなの顔を順番に見た。

「よし……俺も考えたことがあるんだ。このままずるずるクルシスの出方を待ってても、世界は変わらないだろ? だから、今度はこっちから仕掛けよう」
「はは〜ん! やる気になったか! クルシスに殴り込みだな」
「ああ。目的は二つ。千年王国設立の阻止と……オリジンの解放だ」

ロイドの言葉に、みんなもうなずく。
その二つの目的を果たせなければ、世界を一つに統合することはできない。最終目標のために、ミトスくんを倒す理由は、その二つであると、みんなわかっていた。

「でも、オリジンを解放すれば、クラトスの命は……」
「……まだ、よくわからない。でも……まだ、死ぬと決まったわけじゃないし。あいつが俺たちの味方をするかもわからない。わからないことを悩んでいる暇はないさ」
「エターナルソードはどうするの? 仮に、オリジンの封印を解いたところで、ロイドでは装備できないのでしょう? 私もジーニアスも、剣を扱えるかどうか……」
「それなら心配には及ばねえ」

ことさら明るい声で首を振るゼロスくんに、自然とみんなの視線が集まる。
彼は相変わらず不敵に笑って、手はある、とうなずいてみせた。

「どういうことだ?」
「俺さまがどうして魔法剣を使えると思う? テセアラの新技術で魔導注入を受けたからよ。俺さまは人間だけど、エルフの血も入ってるってわけだ。どうだ? これならなんとかなりそうだろ?」
「それなら……これが最後の決戦になるわね」

その言葉に、みんなはそっと息を吐く。ため息とかではない。覚悟を決める前の一呼吸だ。
その証拠に、みんなはちゃんとまっすぐに顔を上げていて。それぞれの戦う理由のために、ぐっとこぶしを握っている。

「わかりました。やりましょう」
「……世界の統合のために」
「……そうだね」
「私も頑張るね」
「……コレットは残れ」

ロイドの言葉に、コレットが首を傾げる。当然だ。どうして一人だけ置いていこうとするのだと、彼女は表情を曇らせる。

「……どして?」
「お前はマーテルの器として狙われてるんだぞ。ミズホかレネゲードに頼んで、かくまってもらうんだ」
「……ロイドが……そういうなら……ううん、やっぱり、ついてく!」
「でも……」

確かに、彼女がここでつかまったりして、器になってしまったらそれこそ問題だ。それはコレットもわかっているのだろう。だからうなずきかけて……けれど。すぐに首を横に振って、コレットはまっすぐにロイドを見る。
それに一瞬怯んだロイドを見て、ゼロスくんがはいはいはいはい、とやたらと茶化した声をあげた。

「ははーん。おまえ、ミトスからコレットちゃんを守り抜く自信がねーんだな。かわいそうなやつ」
「な、なんだと」
「大丈夫よ、コレットちゃん。このゼロスさまが必ず守ってあげるからよ」
「ゼロス!」
「つれてってやりな。どこにいたって、コレットは狙われるんだ。そんなことわかってんだろーが。男なら、びしっと決めな」

声を低くしたゼロスくんに、ロイドがぐっと言葉を詰まらせる。
それは、彼もわかっていたことなのだろう。……昨日はあんなにわたしに言ったくせに、って、ちょっと思ってしまったのは秘密だ。わかっていても避けられることならと、安心できるならと、思ってしまう気持ちもよくわかるから。

「はっ、珍しくあんたと意見が一致したねえ。ロイド、今回は悪いけど、ゼロスの言葉に同調するよ」
「ロイド」
「……ナギサ」

ゼロスくんに続いてしいなも声を上げたのを見て、わたしもそっとロイドを見る。
こちらを見る彼の視線は、やっぱりちょっと不安そうだ。それがまるで可愛い弟みたいに見えて、ちょっとだけ気が抜けてしまう。なんだか、ロイドのことをちゃんと年下の、わたしを家族として迎え入れてくれた弟だって、久しぶりに感じた気がする。
わたしはゆるりと首を振って、頑張って笑ってみた。

「コレットくらい、守ってみせてよ。……じゃないと、一緒に行くわたしも不安だよ」
「! ……いいのか?」
「……正直、ちゃんと戦えるか、わからない。でも、わたしがこれからどうしたいって決めるにしろ、何にしろ。もう一度会いに行かないといけないと思うから」

こんなにみんなに背中を押してもらったのに、出せる答えがこれなんて、非常に情けないけれど。でも、これがわたしの今の素直な気持ちだ。ミトスくんに会いたい。もう一度、ちゃんと話がしたい。まだ、ミトスくんと一緒にいたいって、言えなかったことを、言いたい。
いつまでも一人で決められなくてごめんね、と言えば、ロイドはゆっくりと首を振って。それから、自分も覚悟を決めるように、ぐっと背筋を伸ばした。

「……わかったよ。コレットを連れていく。それでいいな」
「ありがと、ロイド。それにみんな」