118-1

それを見つけたのは、救いの塔へ向かってレアバードを走らせている時だった。

「なんだ、あれ?」
「町……か?」

テセアラの空を浮かぶ、大きなそれ。いくつかの家が、塗装された道のような通路で結ばれた、大きな建造物。
あちこち苔生しているようだし、ぱっと見た限り、なんだかはよくわからないけれど……みんなの言う通り、あれは町なのだろう。町の一部を切り取って、それがそのまま浮いているような。そう考えるとすんなりと受け入れられる気がする。

「どうして町が浮かんでいるんだ?」
「わからない。精霊の力でも使ってるのかな」

と言っても、こちらの世界にいる主要な精霊はすでにしいなと契約しているので、この町を浮かし続けることはしていないはずだ。そもそも、テセアラの精霊の中でこういうことができそうなのはエネルギー源によく使われるヴォルトくらいだけれど、それにしてはあまり機械的な印象を受けない。
他の力を持った精霊がおこなっているのか、もっと別の技術で浮かんでいるのか。それとも、世界が二つに分かれていることや、以前の大樹の暴走の結果によって起きた異変なのか。もしかしたら、はたくさん思い浮かぶけれど、眺めているだけでは何もわからない。
とくにどこかに向かって移動している様子もない町の周りを並走してから、やがてリフィルさんが口を開いた。

「……ロイド。急いでいるのはわかっているのだけれど……」
「ああ。もしここに精霊がいて、力を借りられるのならそれはありがたいことだし、何か異変が起きた結果だというなら調べないといけないもんな」
「ええ。ありがとう」

そう決めてから、わたしたちはゆっくりと町の広場のような場所にむかって降りる。
特に、わたしたちが来たことに対して騒ぎが起きるような様子はない。そもそも人がいないのかなとも思ったけれど、コレットの目によればあちこちに人が歩いているのが見えるらしいので、やっぱりここは人の暮らす町なのだろう。

散策してみよう、ということになって、けれど大所帯で動くには少し狭いから、数人に別れる。
なんとなく、ロイドとジーニアスとリフィルさんと一緒に歩いていると、不意に男の人が立ち止まった。

「……バージニア」

リフィルさんを見て発せられたその名前に、彼女がはっと息を飲むのがわかる。

「母をご存知なんですか!?」

思わずそう問いかけたリフィルさんに、驚いたのはその男の人だけではない。
隣にいたジーニアスもびっくりした顔でリフィルさんを見上げている。無理もない。こんなところで、母の名前を聞くなんて想像できるわけがないだろう。
そして、男の人も。同じように驚いた後、申し訳なさそうにぐっと顔をしかめると、力なく首を振った。

「……そうか。お前はバージニアの……」
「母のことをご存知なら教えて下さい! ここに……この町にいるんですね!?」
「……会わない方がいい。会っても……無駄だろう」

それだけを言って、彼は立ち去る。この町のどこにいるとは言わなかったけれど、あの口ぶりからするに、間違いなくリフィルさんたちのお母さんはここにいるのだろう。
リフィルさんはくるりとロイドに向き直ると、いつもと違ってどこか焦ったような表情で、お願い、と迫った。

「ロイド……お願い。バージニアという人を探して」
「あ、ああ……」