ユアンの願いにちゃんとうなずいてから、わたしたちは再び祭壇の間へとやってくる。
この場所を見るのは三度目ともなれば、もうそんなに珍しさも衝撃もない。それでもやっぱり、通路に並べられているたくさんの棺を直視することはできなくて、わたしたちはひたすらに前を向いた。
ここからミトスくんがいるであろう場所に向かうには、おそらくまたあのワープ装置を使う必要があるだろう。問題なく使えればいいけれど、どうだろう。世界再生の時には機能していなかったし、前回は連行される形だったから、普段は繋がっていないかもしれない。
その場合はどうすればいいかな、と考えていると、ふとゼロスくんが大きく前に飛び出して、くるりとこちらへ向き直った。
「……ここは、俺に任せとけ」
「まかせとけって、どうするんだよ」
「こんなこともあろうかと、前にここへ来た時にちょこっと細工をしておいたんだ」
直接殴りこむことになるかはわからなかったけれど、まだまだ情報は必要だし、どのみち世界を一つにするためにはどうしてもあいつらと対峙する必要がある。その時にワープ装置が使えなくちゃ、何もできないだろ、と言う彼に、確かにその通りだとうなずく。
だからといって、その細工というのがうまく働くのかは、ちょっと怪しいところだけど。そこは神子の制度をうまく使ってだな〜と説明しながらエターナルソードの近くへと移動したゼロスくんが、コレットに向かって手招きした。
「コレット、ちょっとこっち来て。あと……そうだな、ナギサもいた方がいいか」
「え? うん……」
「コレットはわかるけど、わたしも?」
「ぶっちゃけ神子のあれそれが必要な細工なんだけど、まあ、保険ってとこ」
コレットちゃん一人じゃ不安かもしれないし、なんて言葉は説明になっていなくてよくわからないけれど、まあ、必要だと言うのなら断る必要もないか。
そう思ってコレットと一緒に近付けば、不意にばさりと翼の音がして、わたしたちの周りを天使が取り囲んだ。
「えっ?」
「ご苦労じゃったな、神子ゼロスよ」
どうして急に囲まれたんだ、と思っている間に、今度はプロネーマの声がして、さらに混乱する。
声がした方へ視線を向ければ、そこには確かにプロネーマの姿があって、わたしたちを見下ろしていた。
入口にいた天使たちのように、わたしたちがここに来るのを待っていた……というのは、たぶん嘘ではないけれど。こんなにもスムーズにわたしたちとロイドたちが切り離されているのは、それだけが理由じゃないって、先ほどの彼女の言葉を聞けば、さすがにわかる。……わかってしまう。
「さあ、二人をこちらに」
「はいよ」
ぶおんと足元に魔法陣が浮かんで、すっかり慣れたワープの感覚。
そして次の瞬間には気付けばプロネーマに二人して腕を拘束される形で囚われ、周りを天使に囲まれた状態になっていた。
「ゼロス!?」
「あんた、何するんだよ!」
「うるせーなー。寄らば大樹の陰ってしらねーのか?」
みんなの驚いた顔が、ここからよく見える。けれど、ゼロスくんの表情だけは、ここからは見えない。
見えないけれど……その声が、突き放すような音をしていることは、よくわかった。
「お前らのしていることは、無駄なんだよ」