状況が、まったく飲み込めないわけじゃない。
動揺はしている。どうしてって、信じたくない気持ちが勝っている。
でも、こうしてプロネーマに拘束されて動くことができない状況になっていれば、嫌でも理解してしまう。この状況を生み出したのが誰か、どうしてこうなったのか、ちゃんとわかっているから。
「いいじゃねえか。コレットちゃんだって生贄になりたがっただろ。ナギサちゃんも、大好きなミトスくんと戦わずすんで、いいこと尽くしだ」
「ゼロス! 裏切るのか!」
……この状況を作り出したのがゼロスくんだっていうこと。
それだけで、ゼロスくんが今、わたしたちとは違う方向を見ているって……わかってしまう。
「うるせーな。フラノールでの俺の言葉、忘れたのかよ。俺は、強い者の味方なんだぜ」
「裏切るとは笑止。ゼロスは最初から、わらわたちの密偵として、お前たちの仲間になったのじゃ。のう、ゼロス?」
「本当なのか?」
「うそでしょう? うそだよね? そうだよね?」
「ゼロスくん……」
「俺さまは、強い者の味方だ。レネゲードとクルシスとお前ら、はかりにかけさせてもらったぜ」
プロネーマの言葉に、ゼロスくんは肯定も否定もしない。ただ、ずっと存在していた三つの勢力のすべてに関わっていたのだと、それだけを答える。
それだけで、十分だ。それだけで、わたしの表情は勝手に傷ついたって歪んでしまうし、彼と対面しているみんなも、どうしてって悲しそうにする。その中でも怒ったように眉を吊り上げたしいなが、ぎゅうっと悔しそうに拳を握りしめるのがここからでも見えた。
「レネゲードにまで情報を流してたのか! あんたってやつは……! いい加減だけど、いいところもあるって、思ってたのに……」
「おほめの言葉、あ〜り〜が〜と〜」
いつもと違う低い声で裏切ったと宣言するのに、茶化す声色はいつも通りで、なんだか混乱してしまう。
みんなに背中を向けて、こちらに振り返ったゼロスくんの表情も、いつも通り。裏切ったからって急に人相が変わるわけでもなんでもなくて、彼にとって、この結果も状況も全部想定通りだって伝わってきて、みんなも感情任せに怒ることもできず、ただただ動揺するしかできないでいる。
「結局、マナの神子から解放してくれるって、ミトスさまが約束してくれたんで、こっちにつくことにしたわ」
「神子がそんなにも嫌か? 仲間を売るほどに」
「ああ嫌だね。その肩書ぉのおかげで、ろくな人生じゃなかったんだ。たまんねーよ、ほんと。セレスに神子を譲れてせいせいだぜ」
「……うそだ! 俺はお前を信じるからな。信じていいって言ったのは、お前なんだぞ」
「ばっかじゃね〜の」
こんなにも堂々と裏切ったのにまだそんなこと言うのかよ、と呆れる彼の顔は、心底困っているように見えた。
けれどそれは、すぐに消えてしまって。そろそろ行きましょうよ、と彼はプロネーマに媚びるように笑いかけると、わたしたちの隣まで移動して、そのままワープ装置へと手を置いた。
「ロイド……ロイド! ロイドーーー!」
コレットが必死にロイドの名前を呼ぶのを聞きながら、わたしは視界から仲間たちが消えるのを見て、奥歯を噛んだ。