「献身と信頼。その証を立てよ。さすれば我は振るわれん……」
「献身と信頼。その双方を満たす者。つまり、己の半身となり得るほどの近しい者とともに力を行使する。そういう意味ではないかと」
オリフィエルとアスラの声が聞こえる。
遠く、果てしない空が夕焼けに染め上げられた底に、二人の影が伸びている。
二人はどこか晴れ晴れとして、でも未だ何かを悩むように話を繰り返していて。
そうして、アスラが、自分には半身となり得る存在がいると笑って……そこで、映像は途切れた。
次の瞬間、目の前に広がるのはあの夕焼けではなくて、ガルポスジャングルの奥にある記憶の場だった。
「今のは……」
「創世力の使い方について話してたみたいね。けど……」
「何か思い出したようだね」
情報をまとめようとしたところで聞こえてきた声に振り返ると、こちらに歩いてくるシアンと二匹の犬の姿が見えた。
彼の姿を見ると、エルが一歩前に出て彼を指さす。
「あ、自分、犬男って名前ちゃうかってんなぁ。え〜っと、なんやったかいな……」
「ちゃんとシアンだって名乗っただろ! おかしなあだ名つけるな!」
「そう、シアンくんよ。ほら、シアンくん。おいで、抱っこしてあげるから」
「はぁ? 何を言ってるんだお前。ボクはただ、創世力の場所が知りたいだけだ! さあマティウスさまに協力しろ!」
強気に突っぱねて、シアンは噛みつくように催促した。
もちろん素直に答えるわけにはいかない。それに、シアン自身は悪い子ではなさそうで、話せば仲良くなれる気もする。
ルカも同じように思ったのか、なるべく彼を刺激しないよう、ゆったりと近付いて話しかけた。
「君がどういうつもりか知らないけど、マティウスなんかのところにいちゃダメだ」
「そうそう。お前いいように利用されてんだよ。絶対」
「そんな言葉で惑わそうったって無駄だ! 教団は転生者を大事にするんだ。捕縛適応法からも守ってくれる! 生まれながらに不幸な転生者。人間の都合で不幸になる動物たち。みんなを救う新しい世界が必要なんだ! それこそが、マティウスさまの言う理想郷だ!」
「教団は転生者を集めてる。でも、それは適応法と同じなんだよ。教団に集められた転生者たちも、同じように研究所や軍隊に送られているんだ」
「軍の研究所にマティウスがいて、あたしたちハッキリ聞いたのよ。マティウスは転生者を集めるための、教団の広告塔だってね」
「そんなわけないだろっ! ボクは騙されないぞ! バカにするな!」
「物を知らん者はバカにされても仕方あるまい。とっとと帰ってその理想郷とやらの夢でも見るがいい」
「バカだと!? またボクをバカにしたな!」
思わずリカルドさんの足を蹴った。
だめだ、リカルドさんって厳しい言い方がデフォだからこういう説得めちゃくちゃ向いてない。
「なあ、もうバカでええやん? マティウスなんか放っといて、ウチらと来ぃやあ」
「な……なんだと?」
「自分、友達おらへんから言うてマティウスなんかを頼りにしたらあかんで。せやから、ウチらと友達になろ。な? みんなええ人やで?」
「え? あ……その……あの………………………………いや!」
エルの言葉に動揺したのか、一瞬しどろもどろになるが、シアンはすぐに首を振ってわたしたちに飛びかかってきた。
「騙されるもんか……お前たちなんかに絶対騙されないからな! 行け! ケル! ベロ! ボクが信じているのは、マティウスさまだけだ!」