41-3

「バカにすんなぁぁぁぁ! ブラッディインパクト!」
「歯ぁ食いしばりや! 龍牙点穴閃!」

シアンとエルの拳が交差する。
二人の衝撃波をまとった攻撃は確実に二人にダメージを与えた……こうなれば、仲間の能力が勝敗を分ける。あの二匹の犬は確かに手強いけれど、こっちにはわたしも含め三人も回復役がいるんだ。
やがてわたしたちの勝利という形で戦闘は終わり、シアンは悔しそうに地面を殴りつけた。

「なんで邪魔をするんだよぅ……ボクには……ボクには理想郷が必要なのにっ! この世界には、転生者が生きていける場所なんてないのにっ!」
「そんなことあらへんて……こっちにおいでぇや。アンジュ姉ちゃんに抱っこしてもらい? ほら見てみ? おっぱい大きいで?」
「む……胸の話はともかく、私たちと仲良くしましょ。ね?」
「バカなガキには保護者が必要だ。来い」

差し伸べられた手に、だがシアンは強く睨み返すだけでそれを掴むことはしなかった。

「言ったはずだ……お前たちなんかには騙されないってね! お前たちに何がわかるんだよ! 生まれたときからみんなに嫌われ、姿だって人とは違う! こんなボクをわかってくれるのは、マティウスさまだけなんだ!」

そう吐き捨てて、森の奥へと消えていく。
その背中を見送りながら、隣にいたエルがぎゅっと手を握りしめるのに気付いた。
彼女はシアンの背中をどこか痛そうな顔で見つめている。

「あいつのあの目……拾うたばっかりの頃の小さいアスラにそっくりや……絶対、ウチの子にしたる。嫌や言うても、無理やりウチの子にしたるからな」

そう、強い意志を固めるエルの呟きを聞きながら、わたしもシアンの消えた方向を眺めていた。