6-3

「そもそもなんでガラムと……レグヌムだっけ? 戦争してんの?」
「あ、あたしも気になってた」

何か話でもしてないといろいろ耐えられそうになくてそう問いかけると、イリアもずいっと入ってきた。
どうやら彼女の村にそういった情報は流れてこないようだ。よかった。じゃあわたしも今度から辺境の田舎の出だって言おう。
でも、王都の人達にとっては結構当たり前のことのようで。ルカが知らないんだ、と困ったような顔をしたので、イリアが食ってかかることで、泣きそうになりながらも説明を始めてくれた。

「えっとね、まず発端となったのは……」
「確かガラムが交易路を一方的に封鎖したのが発端だったよな」
「あれ? 山賊を装ったレグヌム軍が鉱物を輸送中のガラム軍を襲撃したからって聞いたけど……」
「そりゃガラムがそう宣言しただけだ。ガラム軍はゲリラ戦にどうしても持ち込みたかったんだよ。だからレグヌムの増援と補給路を断つために早々に交易路を封鎖したのさ」
「へえ〜そうだったんだ」
「ゲリラ戦はガラムのお家芸だからな。あの国の兵士は軍隊っていうより武芸者の集団って感じだからなぁ」

何故かわたし達への説明はやけに詳しいスパーダの話になり、いかにも勉強が好きそうなルカのための説明に変わっていった。
こういうのって、前知識がある程度備わっているから、新しい事実に楽しさを覚えるんだと思う……つまり、つまらない。
それはイリアも同じらしく、彼女に至っては欠伸までもらしている。

「ふあぁ〜あ、退屈な話ねぇ」
「確かに。時事問題とか試験でいつもかったるかったなあ」
「ああわかるわかる。でもいいわね。うちの村には学校なんてなかったしぃ」
「あーじゃあわかんなくったってしょうがないしょうがない。わたしもしょうがないっと」
「二人とも……もう」

はあとため息を吐くルカくんに、ちょっと申し訳なくなったので、一応謝っておく。
説明を求めておいてこの態度は無かったよね。でもつまらないのはつまらないし。今度はもうちょっと上手く、この世界の基礎情報を得られるようにしないと……正直、前世だなんだという世界なんだから、異世界人くらい何の問題もなく受け入れて貰えそうだけど、やっぱり自分も理解しきってないことを相談する勇気はない。
だから早く、コンウェイさんに会いたかった。

「そうだミオ。あんた、創生力ってのがある場所知ってる?」
「創生力?」

イリアの質問にわたしはんん、と考える。
なんか聞いた覚えがある。
確か……確かアスラが、言っていたような、ないような……

「……ううん、わかんないや。イリアはそれを探してるの?」
「そうよ。それが原因で教団に追っかけ回されたんだもの。そんなに大事な物なら先に取っちゃおうってね」
「うわあ悪どい。でもそういうの割と嫌いじゃないかも」
「でっしょ〜」

いひひひひっと悪人面で彼女は笑う。もう慣れてきたけれど、イリアもスパーダもだいぶこう……悪ガキ大将というより、悪人みたいな笑い方する。
怖いなあ、と思いつつ。創生力とか、他のこととか。いつかまた、夢に見るのかな、と思うと、なんだかあまり気乗りしなかった。