「……駅ー…………駅ー」
「……んあ」
カタンカタンと規則正しく揺れる電車の中で、わたしはぱかりと目を覚ました。
ぼんやりする頭で、ああまた夢を見ていたのかと理解する。
電車の中は気を抜くとすぐに寝てしまう。まだまどろんでいたいけれど、でも、乗り過ごさないようにちゃんと起きなくちゃ。
「……っ!?」
ちょっと待て今アナウンスはどこの駅って言った。
バッと背筋を伸ばして駅を見ると、そこにはわたしの降りるべき駅の名前がある。
乗り過ごすも何も、今まさにいいタイミングで目を覚ましたのだ。まずい、急がなくては、そう思って慌てて立ち上がるけれど、ああ、なんということか。
無情にも目の前で扉は閉まってしまって、再び電車は動き出した。
ああ、立ち上がったのに恥ずかしいと扉にもたれかかって、大人しく次の駅で降りることにする。
ちょっとウトウトしていただけなのに、夢まで見るほど寝てしまったのがよくなかった。少しぼうっとしているだけなら、きっとすぐに行動で来たのに。
しかも、それは毎日のように見る夢と同じ内容のものだ。
遠い、どこか知らない世界の遠い国で、わたしは「ウズメ」という名の祭事……だか神事だかの神様になっている夢。
小さな頃から何度も見るこの夢は、最近になって更に頻繁に見るようになった。
夢の話なのに他人事に感じられないこれがどんな意味を持っているのかは知らない。小さい頃に夢占いとかしてみたけれど、よくわからなかった。ちゃんとわかったというか、腑に落ちたのは、夢を見ると言うことは睡眠の質が悪いとかなんとかで、わりとよく寝不足になって授業がつらい、ということだけだ。
ただ。その夢を見るたびに、わたしは何かをしなくては、と思うからややこしい
それが何かは知らないけれど。
「ってだめだめ、こんな時こそ前向きになろう。降りそびれた代わりに、ちょっとだけ空が綺麗に見えたとか! ね!」
道の真ん中で小さく呟いて空を見上げる。
なんでも、前向きに考えた方が楽しい。楽観的、とか、能天気、とか言われるくらいの方がちょうどいいのだ、なんだって。
ほら。夕暮れから夜へと変わっていく空では、青いような黒いような優しい色に細い月が煌めいている。すごく綺麗だ。あーあ、と思って空を見上げない限りはきっと気にしなかったから、今日のこれは、きっといいことだった。よし。
しっかりと自分に言い聞かせて
鞄を肩にかけ直……そうとして、その鞄が手の中にことに気付いた。
「え」
慌てて辺りを見回すと、道の少し先の垣根の前にいる鳥と目が合った。
鳥が、器用にくちばしで鞄を持っている。
どうして? と思わずつぶやくと、鳥はその鞄をガサッと垣根の向こうに落としてどこかへ飛んで行ってしまった。
どうして? なんでわたしは鳥に鞄を取られているんだろう。結構小さい鳥だったのに。そんなドジっこになったつもりはないぞと、深くため息を吐いて。それから、鞄を回収しようと垣根の中に手を突っ込む。届かない。仕方ない。見つかって怒られないことを祈ろう。
がさがさと垣根を越えて、鞄をとって。早く帰ろうとくるりと回転して……ぷにゅ、とした何か柔らかいものに、ぶつかった。
「あれ?」
目の前。
わたしが入ってきた垣根の隙間。
そこには何故か、丸いオタマジャクシのような……でもなんか全然違うような、抱えるくらいの大きさの生物がいる。
「……ええ?」
気が付けば、一瞬のうちに周りの垣根なんてなくなっていて。
その代わりに、わたしは大きなオタマジャクシたちに囲まれていた。