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ぞわっと肌が粟立つのを感じて、慌ててその生物を押しのけて走り出す。
何が起きたかわからない。冷静に見ればこのオタマジャクシも可愛いのかもしれないけれど、今のわたしには恐怖でしかない。
そう思って駆け出したけれど、その先にあるのは森だ。
近所には存在していないはずの森がそこに広がっている。

なんで? どうして? さっきまでいつもの帰り道で、ええっとええっと。
パニックになる頭をなんとか落ち着かせようとするが、全然冷静になんてなれない。
どんどんこんがらがっていく思考の中で、後ろからさっきの生物がやってきては体当たりをかましてくることだけはわかって、駆け出すことしかできない。

「どっ、どうなってんの、これえ!」

走れども走れども見知った道に帰る事は出来ず、ひたすらに緑豊かな森だけが続く。長閑な光景が恨めしい。
ぴょんぴょんんと後ろを追いかけてくるそれらが気味悪くて、わたしはとにかく走り続けた。
だが、パニックになってるわたしなんて簡単に追いつけるのだと言わんばかりに足をつついてくるから、わたしはそれを振り払おうと持っていた鞄を振り回す。

「こっち来るなってばあ!」

鞄でべちんと叩けば、それらは一瞬怯んだのか距離を取った。
教科書とか入ってるから痛いと思う……少しだけごめんなさいと思いながらブンブン振り回して、だが足がもつれてしまってその場に尻餅をついてしまう。
やばい。
そう思った直後、警戒していたそれらが一気に突進してきた。

「切り裂け刃よ……ダンシングエッジ」
「ひっ!?」

静かな声が聞こえて、同時に光で出来た剣のようなものがいくつも飛んできて、迫っていたそれらを次々に貫いた。
仲間がやられたのを見て、残っていた数匹もどこかへと逃げていく。

その様子を呆然と見送っていると、軽い足音がしてわたしの上に影が出来た。
見上げれば、不思議な表紙をした本を持った綺麗な……たぶんさっきの声からして男の人、がそこにいる。
彼はにっこりと笑うと、尻餅をついたままのわたしに手を差し伸べた。

「大丈夫かい?」

やけに綺麗なその人の登場に、わたしはまた呆然と思う……これも、夢ですか、と。