12-1

聖女が連れていかれただろう軍事施設に行くために、わたしたちは憂いの森と呼ばれる森を進んでいく。
聞き込みの時、ここに近付いてはいけないよ、と言ってくれた人のことを思い出して、ちょっと悪いことをしている気分だけれど。ここを通らないとものすごく遠回りになってしまうし、正面から入ることになるから潜入が難しい。となれば、多少無理してでもこの森を通ることになるのは必然だった。

「ミオ!」

イリアの鋭い声が聞こえて、わたしは反射的に鞄を振り回す。
中に大したものは入っていないけれど、勢いよくぶつければそこそこに痛い。ガスンと音を立てて魔物を殴んで怯んだところにイリアの弾が飛んできて、わたしはすぐに後ろへと下がった。

「ナイス! もうちょっと下がってなさい!」
「了解! ……健康一番、リカバー!」

ここを歩いている途中で覚えた、解毒の効果を持つ新しい天術を使って、みんなの調子を整える。
わたしに出来ることは、とても少ない。でも、大人しくどこかに隠れて住むのは、やっぱりちょっと心細くて。自分の人生を自分で歩むために、前世のことを片付けようとするみんなと一緒にいる、ということを選んだのだから、怖くても、非力でも、できることをしていくしかないのだ。
……本当に、すっごく怖いけど!

「はあ……にしても、やっぱ兄貴の軍隊が全滅寸前になった場所だな」
「うん、なんか、もう決心が揺るぎそうだよ……」

ぐいっと乱暴に汗を拭うみんなも、相当疲れているようだ。疲労の色が濃い。でもここで休むなんてことはできないから、歩くしかない。
せめてあとどれくらいかわかれば気が楽になるのに、と思っていると、急に近くの木から、鳥が一斉に飛び立っていった。
ざわざわと木が鳴って、鳥の羽ばたきが辺りに響き渡って。それに驚いて足を止めると、今度はコーダもぎゃあと騒いで、わたしの足首にしがみついてくる。
そして、いったいなんだと警戒しようとするわたしたちの前に、それは現れた。

「ヘソがピリピリするんだな、しかし! 危険をキャッチなんだな、しかし!」
「おいおいおいおい……ジョーダンじゃねーぞ。なんだありゃ……」

重たい足音をたてながら、その魔物は姿を見せる。
青紫の体はどこか光沢を持っていて、膨張した丸い胴体にも関わらず首は細く長く伸びている姿は、ここまでで見たことのないものだ。
目玉は確認出来ず、また足が昆虫のように生えている姿はあまり好感を持てるものじゃない……しかも、首が痛くなるほど見上げるような大きさを持っていて、ぞわぞわと肌が粟立つ。

だめだ。危険だ。
そう警鐘を鳴らす頭の中で、ふと、何か懐かしい景色が見えた気がした。