13-1

コンウェイさんだ。
王都の広場で待っててねと言われた後、捕まってしまったせいで会えなくなってしまっていたコンウェイさんがそこにいる。
わたしは思わず彼の方に駆け寄ろうとするが、コンウェイさんがしー、と指を口元に持って行って、少し待って、と手で制してきたのでおとなしく動きを止める。
ついでに何故か言葉もうまく出てこなくなってしまって、あ、とか、う、とか言っているわたしの横で、ルカが驚いた声を上げた。

「あなたは確か、レグヌムで……!」
「ルカ、こいつのこと知ってるのか!? 誰だよおまえ!?」
「ボクなんかのことより、彼のことほっといていいの? 続きが待ち遠しいみたいだけど」

くいとコンウェイさんが示す先では、あの魔物が再び大きく首を持ち上げたところだった。
再び襲い来るであろう衝撃波を慌てて避けながら、スパーダは律儀にもコンウェイさんへ言葉を投げる。

「このままじゃあいつに勝てそうにないんだよ!」
「そう。じゃあ、少し手伝わせてもらうよ」

涼やかにそう言うと、コンウェイさんは前へと一歩踏み出した。
彼の持っていた本が光って、ひとりでに空に浮かぶ。そして次の瞬間、溢れ出した光が雷みたいな鋭さを持って魔物を囲んだ。
それまで一度だって反応を見せなかった魔物は、大きく悲鳴を上げると痺れたように身を縮こめる……これは、天術だろうか?
でも天術は転生者にしか使えなくて、コンウェイさんは異世界の人で……いや、わたしは何を言ってるんだ。異世界だから転生者じゃないってのは、「浅神深魚」という存在が真っ向から否定しているのに。

コンウェイさんは雷のような光が収まったところで、さあどうぞ、とこちらへ向き直った。

「これで、彼の世界の物理法則と、キミ達の世界の物理法則が複合化できた」
「なに言ってるかわけわかんないわよ! わかるように説明してよ!」
「キミ達の攻撃が効くようになったってことさ」
「最初っからそう言えよ!」
「でも、これだけじゃ興がないからもう少し手伝わせてもらおうかな。四人とも気をつけて。ほら……来るよ」

まるでコンウェイさんの言葉が合図だったかのように、魔物がこちらへと突進してくる。
ルカとスパーダは再び武器を構えると、本当に効くんだろうな、と叫びながら技を繰り出した。

「散沙雨……虎牙破斬!」
「やあっ裂空斬!」

地を蹴り宙を舞い、鋭い攻撃を与える。
すると、先ほどは仰け反りもしなかった相手の体に間違いなく傷が刻まれた。……本当に、攻撃が効いているのだ。

「本当に効いてるみたいね……ストロングバレット!」
「言っただろう? ……切り裂け刃よ、ダンシングエッジ!」
「崩襲剣! ……うわあっ」
「ルカ! ファーストエイド!」

怒りすら感じる強い攻撃に吹き飛ばされたルカに素早く治癒術をかける。
コンウェイさんがこちらをチラリと見たけれど、すぐに攻撃に戻った。

「ありがとう! やああっ!」

攻撃が通るなら、後は少量でも回復が可能で数の多いこちらが有利だ。
当然相手も次第に動きを鈍くし、弱っていくのがわかる……それを見逃すはずもなく、コンウェイさんは再び本を宙に浮かべた。

「忌まわしき闇を飲み込む、忘却の終焉……サイレントエンド!」

無数のページが本から飛び出し、魔物を拘束するように展開してはまとわりつき一気に爆ぜる。
そして、攻撃が効かなかったはずの魔物は、どうと大きな音を立てて地面に倒れた。