13-3

「あああ良かったもう会えないかとせっかく約束してもらったのに破っちゃったかと思った!」
「ボクこそごめんね。君が既に覚醒した転生者だとは思わなかったから」

いきおいがよすぎたのか、抱き着いた時は少しよろけたコンウェイさんだけれど、ぎゅうぎゅうとしがみつくわたしの頭をよしよしと撫でてくれる。
それが嬉しくてぐりぐりと頬ずりしながら腕の力を強めると、後ろでイリアが声を上げた。

「ちょ……ちょっとちょっと! ミオは知り合いだったの?」
「あれ? ミオ、何度か言ってたよね? 待ち合わせの約束したのに街を出ちゃったって……」
「それがコイツとは聞いてない!」

何故か怒ったように息巻くイリアだが、わたしは振り返らずにコンウェイさんにすり寄る。
ごめんイリア、後でいくらでも弁明するから今は再会の喜びに浸らせてくれ。
そんな意志がわかったのだろうか、後ろで大きくため息を吐くのが聞こえた。

「……あたし、なんか前言撤回したくなってきた」
「イリア、ミオをとられてヤキモチなんだな、しかし」
「え、やだイリアったら、そんな可愛いこと思ってくれるの?」
「るっさい! ほら、行くわよ!」

嬉しい、とコンウェイさんにしがみつきながらもイリアを振り返って笑いかければ、彼女は威嚇するように大声を出したあと、どすどすと足音を踏み鳴らしながら歩き出してしまった。
あとで機嫌とるの大変そうだ。イリアって結構やきもち妬きというか、懐に入れた人間には結構甘いというか、素直じゃないと言うか。心配しなくてもわたしが心細い時いつも一緒にいてくれたのはイリアで、大好きな友達に違いないのに。
面倒くさいけど可愛い〜と笑ってしまうと、ふと頭を撫でていた手が止まって、コンウェイさんが小さく何かを呟いた。

「唯一の同性だからなのか、それとも……」
「え?」
「なんでもないよ。そうだね……キミも一緒に行くんだろう?」
「あ、うん……それ以外に選択肢がないんだけど……」

気を使ってくれたのか、イリアを一人にする方がよくないと思ったのか。こちらの様子を気にしながらも歩き出したルカとスパーダを視線で追いながら、こっそり。他に何か選択肢ってありますか、問えば、コンウェイさんはないね、とにっこりと笑う。
ないんだ。予想はしてたけど。

「それでいいんだよ。キミの魂も彼らを求めてる。だから一緒に行動しているのがいいと思うよ。間違いなく、キミはこの世界の神の生まれ変わりなのだから」

ちょっと伝説とか調べてきたんだ、捕まったと聞いて驚いたよ、と肩をすくめる彼に、忘れ去られたり、怒っていたりしなくてよかった、と胸をなでおろす。
それから、コンウェイさんはわたしの両肩に優しく手を添えて、この旅の最後まで歩くのだと、そう語りかける。

「キミも異世界の人間のはずなのに、この世界の魂の転生者である理由も。ここに来てしまった理由も。この旅で、すべてわかると思う」
「そんなもんですか?」
「君はこの世界に来た時点で覚醒したようなものだったみたいだし。足手まといにはならないよ。それなら、そういうものだって思った方が楽でしょう?」
「確かに」

楽観的に考えた方が楽しい。
最近は少しずつ余裕が出てきたけれど、やっぱりまだまだ不安で、上手にできなかったいつものこと。でも、うん、コンウェイさんが一緒にいるなら大丈夫な気がする。
わたしを知って、わたしを見ていてくれる人がいるなら、ちゃんと自分の足で立てる気がした。

「行こう。キミはこの物語に参加すべきだ」

きっと大丈夫さ、と笑うコンウェイさんを見て、わたしはそっと肩の力を抜く。
それから、みんなを追って歩き出した背中に、あの、と声をかけた。

「……コンウェイさん」
「なに?」
「ちゃんと待っていられなくてごめんなさい。あと、迎えに来てくれて嬉しいです」

へにゃ、とゆるみきった顔で笑うとコンウェイさんは少しだけ驚いた顔をして、それから「それは良かった」とだけ返した。