憂いの森を抜けて少し歩いた先に、目的の軍事基地は存在した。
「ここがナーオス軍事基地……なんだか転生者研究所と似てるね」
「ああ、もしかしたら同じような事やってんのかもな」
「転生者……研究所?」
「僕達転生者の事を実験とか、いろいろ研究してる場所なんだ」
「ふぅん……そう……」
コンウェイさんは転生者じゃないし、あの牢屋みたいだった研究所のことも知らない。だから、何かわたし達とは違った感想とか持ったのかな……なんて思って、ちらりと彼を見る。
コンウェイさんも視線に気付いたのかこちらを見てくれるけれど、少し困ったように肩をすくめた。
ちょいちょいと後ろを指さされたのでそちらを見ると、ぶすーっとした顔のイリアと目が合う。すぐに外されたけど、明らかにわたしに向けられた不満の視線だ。コンウェイさんと合流してから何度も同じことをしたので、原因もおおよそわかる。
つまり、やきもちだ。たぶん。
でもほら、彼女結構やきもち妬きっぽいし、でも妬いているという事実を認めたがらない天邪鬼っぽいし。そんなにわたしのこと好きでいてくれたんだ、なんてものすごく前向きに受け取ってもいいだろう。
わたしはすすす、と彼女に近付くと、もう、とわざとらしく彼女に擦り寄った。
「……もう、イリアったら。そんなにわたしのこと好きだったの?」
「はあ? なに言ってんのよ!」
「ええ〜好きって言ってよ。嬉しいから」
あえてうきうきとした態度をとれば、イリアも頬を膨らませるだけでは意味がないとわかったのだろう。
急に生き生きしてるんじゃないわよ、と呆れた表情を浮かべたので、よしよし理不尽にご機嫌斜めな状況からは脱したな、と判断して、するりと彼女の腕に自分のそれを絡める。
「何よ急に。あんたそんなキャラだっけ?」
「心残りだったことが解消されたことでめっちゃ余裕出た。これからのわたしはいけいけドンドン作戦でいきます」
コンウェイさんに何も言えないまま広場を離れちゃった罪悪感とか、わたしの事情をちゃんと知っている人がそばにいない心細さとか。そういった諸々の不安が、彼との合流で全部解決したので、今のわたしはものすごく安心安定余裕満々の状態なのだ。
まあその他のいろんな問題はぜーんぜん解決してないけど、余裕が生まれれば前向きに能天気に過ごすくらいできますって。
でも、それもこれも、みんながずっと一緒にいてくれたっていうのが大前提なんだけどさ。
「あのねイリア。確かにコンウェイさんはお兄さんって感じで安心するし、会えてすごく嬉しかったけど。イリアがいなかったら、わたし、全然頑張れなかったんだからね」
「え?」
「いっつも励ましてくれたでしょ。戦う時もいっぱい気にかけてくれたし、いろいろ話しかけてくれてさ。だからわたし、イリアのことすーっごい頼りにしてるし、好きだよ」
だから好きって言ってほしいなあ、ともっと密着すれば、イリアはぱちぱちとまばたきをする。
まあ、助けてくれたのは彼女だけじゃないし、ルカもスパーダにも同じように感謝しているけれど。その中でも、やっぱり同じ女の子で、後衛ってことでだいたいいつも一緒にいたイリアにはたくさん助けられた。
だから、好きって思うし、好きって返してくれたら嬉しい。
そう素直に告げれば、イリアはやがて、にんまりと悪い笑顔を浮かべる。うわ、すごい悪人面だ。これはわたしをからかう気満々の顔だぞ。
「ふーん。ミオ、あたしのことがそーんなに好きなんだあ」
「おっこれはわたしに好かれているという自信とアドバンテージで優位に立とうとしているな? イリアまじ意地が悪いよね!」
「はあ!? なに言ってんのよ、あたしのこれは愛よ、愛!」
「うっわーどこの小学生の愛情表現だよ!」
うりゃうりゃと体をつついてくるイリアに対し、うわーうわーとわざと騒ぐ。
イリアってば意地悪い! いや、嫌いじゃないんだがね! くそ!
これから軍事基地に潜入だ! という状況とは思えないほど賑やかにじゃれあうわたしとイリアを見て、男性陣が笑う声を聞きながら、それじゃあ頑張りますか、とすっかり機嫌の直った彼女と共に基地へと入った。