15-1

なんとか機械の動きを止めると、それは嫌な音を立てながらガタンと座り込んだ。
やっと倒せたかと息を吐いて、わたし達は互いの顔を見合わせる。

「と……止まった……?」
「みてぇだな。でも、なーんか爆発とかしそうな雰囲気じゃねェ?」
「ちょっとスパーダ、そういう変なフラグ立てないでよ」
「そんなことより、早く筒の中の人助け出さないと! ホラ、あんたら急いで!」

イリアに背中を叩かれて、男子二人は恐る恐る機械に近付く。
わたしとコンウェイさんはさり気なく距離を取りながら、だがきちんと様子を見守った。

「お! ここ開くぞ。ルカも手を貸せ」
「うん」

スパーダが示したのはちょうど筒の真上にあるハッチだ。
ルカと共にそれを持ち上げれば、空気が漏れる音と白煙を吐き出しながら筒が持ち上がった。
筒はひとりでに飛び出すとその扉を開け、中に溜まっていた緑色の液体を排出する。

そうすれば残るのは、中に入った転生者だけだ。
現れた女性……青い髪を一つに纏めた、これまた美人の……は、自身を支えていた扉と液体とから解放され、ごとりと床に向かって倒れ込んでくる。
落ちてしまう前に慌てて受け止めて床に寝かすが、彼女は目を覚まそうとはせずに小さくうめき声をあげるだけだ。

「ねえ、大丈夫? 生きてる?」
「う……う〜ん……ここで……倒れては……センサスにくみした意味が……あり……ません……」

聞こえた言葉にパッと顔を見合わせる。

「ねえ、聞いた? 今この人“センサス”って言ったよ」
「ってことは転生者だな」
「ねえちょっと起きてってば! 目を覚ましなさいって!」
「しっかり!」

イリアと一緒に少し乱暴に体を揺すると、女性はやっと瞼をぴくりと動かした。
何度か繰り返してはやっと瞼を持ち上げ、ゆっくりと起き上がる。
そして自分を取り囲むわたし達を見て、ぱちぱちとまばたきを繰り返した。

「う……うん……あら? ここは? ……皆さん、どちらさまですか?」
「僕達、ここに聖女アンジュって人が連れてこられたって聞いて助けに来たんだ」
「あんた、その人のこと知らない?」
「アンジュさん? もしかして……アンジュ・セレーナさんですか? ああ、それなら……」
「知ってるの?」

すんなりと名前を返した女性に思わず詰め寄る。
女性はそれに動ずることはなく、ただにっこりと微笑んで頷いてみせた。

「ええ。アンジュ・セレーナなら私のことですわ」
「は?」
「あんたかよ! オレ達そんな冗談に付き合ってるヒマねぇんだぞ。なんで自分にさん付けなんだ、ったく」
「ねえ、あたし達あんたに聞きたいことがあるの。だから一緒に付いてきて」

がっくりと肩を落としたわたし達に代わって、イリアは少し頭を抑えながらそう問いかける。
もちろん、こんな場所に長居はしたくないからだ。彼女だって同じだろうと、そう思ったのに。アンジュさんはイリアの言葉にさっと表情を曇らせると、俯いてしまった。

「……助けていただいて、感謝します。でも私は……」