アンジュさんは不用心にリカルドさんに近付いて、スッと自分の首に手を回す。
何をしてるのかわからなかったけれど、リカルドさんはそれを「わたし達の衝突を避けるためについて行く覚悟をした」と受け取ったらしい。
フッと笑みを浮かべて手を差し出す。
「いい覚悟だ。約束しよう。手荒には扱わない」
「違います。こちらをどうぞ」
アンジュさんは緩く首を振って、代わりに差し出された手に何かを置いた。
よく見えないけどキラキラした装飾品みたいだ。さっきの仕草から考えて、たぶん首飾りだと思う。
それを見て、リカルドさんは驚きの表情を浮かべた。びっくりした、と言ってもどこか嬉しそうというか興奮というか、何か悪いことがあったわけではないのがわかる。
「これは……!」
「差し上げます。そちらの契約は破棄ということでいかがでしょう?」
「……ははは、これは素晴らしい逸品だな。これなら違約金を払っても十分な釣りがでる」
「では、そのお釣りで私と新たな契約を。私と私の友人達の護衛をお願いします。足りなければ手付けとさせてください」
にっこりと笑って、アンジュさんは平然とリカルドさんにそう持ちかける。
ん? これってつまり、「倍の金払うからそいつ裏切って私の物になりな」っていうよく漫画とかにある買収?
うわ、初めて見たわ。すごいな。
「俺を雇おうというのか? ……いいだろう。金さえもらえれば、俺に文句はない」
「みんなも構わないよね?」
問われて、当然みんな戸惑う。
そりゃあ、戦わないで済むならその方がずっといいんだけど、でもやっぱり敵だった人をいきなり仲間に、と言われてすんなりと了承することは出来ないだろう。思わずコンウェイさんをチラリと見るが、彼は自分で考えなさいと微笑む。
うん、ていうか、得体が知れないって意味ではコンウェイさん同じか。同じっつか、転生者である分リカルドさんのが得体が知れてるか。
「あー……ホントに信用できんのか?」
「自称仕事熱心だからねぇ。両方からお金もらう魂胆じゃなきゃいいけど……」
「でも、前は契約に入ってないからって僕らを見逃してくれたよ?」
「ぶっちゃけ戦いたくありません!」
「……じゃあ、まあ、いいかぁ」
「ボクはみんなが良ければ異論はないよ」
相談というには短いやり取りをして、じゃあとリカルドさんに向き直る。
彼はまた無表情に戻っていたけれど、先ほどまでと違って武器を納めているからそんなに怖く感じなかった。
「採用決定だな。……では、どこへ向かう?」
「とりあえずナーオスに戻らねえ? またハルトマンの家にやっかいになろうぜ」
「じじいのメシまた食えるのかしかし! コーダ大喜びだな! 待ってろじじい! 急いで行くぞ、しかし!」
はしゃぎだしたコーダを見て、出口はこっちだとリカルドさんが先陣をきる。
それについて歩くアンジュさんとルカたちの後にわたしも続いた。