17-1

「このまま行けば出口に……っ! みんな待て! 動くな!」
「どうしたの? ……あっ」
「なんだぁ? てめェ……」

先頭を走るリカルドさんに言われて立ち止まれば、出口の方から誰かが歩いてくるのが見えた。
身長はリカルドさんとそう変わらないだろう。褐色肌に白髪がよく映えた男の人だ。けれどそれ以上に特徴的なのは、額に湧き上がった三つめの赤い瞳だろう。
それはまるで意志を持つように強く輝いていて、三つ目玉すべてでわたし達を睨み付けているような気がした。

「転生者どもが、この混乱に乗じてコソコソ逃げおおせるつもりか? 天上界を滅ぼしたゲスどもらしいわ……」
「ゲスって……ご挨拶ね! 一体なんの用? あんたもアンジュが目当て?」
「あら、私、モテモテね」
「ていうか、のんきだね」

緊張感のない会話を彼は鼻で笑う。
大きな口が笑みの形を作って、持っていた槍のような武器に力をこめる。

「一人ではなく全員に用がある」
「全員に……?」
「そうとも。地上のため、今ここで全員に死んでもらいたいのだ」
「なんですって!?」

地上のために転生者を殺す。
その言葉に、ぞわりと体が震えた。

「我が名はガードル。地上を守りし者」

武器が青白い雷を纏うのを見て、腰の裏あたりがゾクゾクと粟立つのを感じる。
恐怖が体を走る。
本物の殺気だ。
戦場でも向けられた、でもあの時よりずっと強くてまっしぐらで、純粋な殺気に体がすくむ。
けれどみんなも次々に武器を構えているのを感じて、わたしはギュッと鞄を握り締めた。リカルドさんが銃口を構えて、強がっているだけかもしれないけれど、笑みを浮かべてみせる。

「こいつ……只者ではないな……」
「……ガードル……?」

なんとなく、なんとなく。
純粋な殺気の中に見覚えと違和感を覚えて名前を繰り返す。
でもわからない。
何もわからない、怖い、死にたくない!

「地上のため……って、どういうことですか?」
「転生者のゲスどもが……己の胸に聞いてみよ。この地上の敵め……」

そう言って、ガードルは腕を振り上げた。