ふらふらとガードルが後退する。
だがまだ倒れる気配はない。もう武器を振るう力はないだろうが油断はできない。
だってまだ、殺気は消えてない。
「お前は……まさか……」
ぼそりとリカルドさんが何かを呟く。でも聞こえない。ただなんとなく、ガードルに対して何かを……何かを感じて、何かを思ったことだけはわかる。
ガードルも同じように、何かを感じたのだろうか。彼はニヤリと笑みを浮かべると、そのまま消えるように去って行った。
姿が完全に見えなくなったのを確認して、どっと汗が流れる……よかった、みんな生きてる。
「ふう……やれやれ、行ったみたいだね」
「あんた、転生者でもねえのにとんだとばっちりだな。ホントに付いて来ていいのかよ」
「キミたちと旅する以上、承知の上さ」
そうコンウェイさんは笑ってみせる。
それよりも早く逃げようと歩こうとして、ふと、無言のまま動かないリカルドさんが目に入った。
ルカも不思議に思ったのだろう。なんとなく顔を見合わせてから、ルカがリカルドさんの服をそっと引いた。
「ねえ、どうしたの? リカルドさん」
「……いいや、なんでもない。早く脱出しよう」
「うん……ガードル……んん……んー?」
「あんたも何気にしてんのよ」
「んー……いや、まあ、いいや」
ガードルという人、やっぱり何か違和感があるというか。ガードル、なんて名前じゃない、と思ってしまうと言うか。なんだろう。あの人も誰かの転生者で、わたしはその人に会ったことがあるのかな。だから、変な違和感があるのかな。
でも、同じように関りのあったみんなには同じようなこと思わないし。なんなんだろう。すごく気になるけれど、思い出せないものはもう仕方ないので、後回しにしておいた方がいいかも。
わたしは、ウズメのこと、よく知らない。前世のわたしらしいけれど、今のわたしはウズメではないし。あんまり彼女のこととか、彼女の考えていたことを知ってしまうと、他の転生者の人みたいに、境目がわからなくなりそうでこわいし。
とにかく早く外に出ようと、走っている間にルカとアンジュさんがリカルドさんに質問タイムしてるのを聞きながら、やっと空が見えた時には完全に考えるのを止めていた。
「大丈夫、アンジュ。少し顔色悪いみたいだけど」
「平気よ……ずっと体を動かしてなかったから、急に体を動かすとツラいみたい」
「じゃあ、ハルトマンの家で休ませなきゃな。悪いけど、ナーオスまで辛抱してくれよ」
よし、もうひと踏ん張り。
頑張ろう、もっと、いろんなこと。