わたしたちの足元で、光が静かに渦巻いている。
その光をぼんやりと眺めて、ああ、今のは、遠い昔の記憶だと自覚した。
鍾乳洞の最奥。そこにあった光の渦が、強い輝きと共に見せた景色。
穏やかな光の中の、この世界でも、わたしの世界でもない、どこか遠くの場所の景色。
「見えた……今の光景は……」
「アスラのセンサス軍が天上界を統一したときの光景だった……のか?」
「……ヒンメル」
見えたのは間違い無く天上界の……前世の景色だ。いつも夢で見てるのと変わらない。だからみんなも、驚きはしてもすぐに受け入れる。
ただいつもと違うのは、夢ではなかったこと。そして、みんなが同じものを見たということだ。
「え〜と、じゃあ、みんな今のが見えてたわけ? リカルド、あんたも?」
「ああ。俺にも見えた。ミオもだろう?」
「あの時あの場にいなかったのに……この光の渦、なんなんだろう」
ウズメはもちろん、その時には死んでいたはずのヒュプノスだったリカルドさんにも見えるなんておかしい。
今までだって、あくまで自分から見た記憶しか見えなかったのに。
変なの、と呟くと、アンジュが静かに口を開いた。
「あれは、天上界の記憶を留める装置。記憶の場と呼ばれるもの」
「記憶の場? アンジュ、どうしてそんなこと知ってるのよ?」
「同じ物が、ナーオス大聖堂の地下にあったの。私が前世の記憶を思い出したのは、それに触れたのがきっかけだったから」
「へぇ〜、ほな、さっきみたいのんが他にもぎょーさんあんのん?」
「なるほどな。他にも同じものがあればそれを巡って回れば……」
「どんどんいろんなこと思い出せて、楽しなるっちゅうわけやね!」
「だね! そしたらありそうな場所を巡ればいいってことで方針も決まるね!」
「そういうことや!」
記憶全部辿れば、そのまま帰る方法も見つかるかなあ。
エルマーナとハイタッチしながらそんなことを考える。
あ、なんかだいぶ明るい未来が見えてきたかも……というところで、あれ、とエルマーナを抱きしめた。
「……ちょっと待て待て! おい! お前! なにオレたちの会話に加わってんだよ!」
「エルマーナ。もしかして今の記憶、君にも見えたの?」
「見えたで?」
「どうして!?」
「どうしてってそりぁ……ウチがヴリトラだったからやで!」
「ヴリトラァ!?」
エルマーナはあっさりと答える。
そういえば、凄く自然に会話していて気付かなかったけど、彼女は一般人のはずで、こんなすんなりと前世の話なんてできないはずだった。
少なくともみんなそう認識していた。だが、彼女は前世のこともすんなりと受け入れて、しかも自分もあそこにいたよと言って。そうして口から出て来た名前は非常に聞き覚えがあるもので、わたしたちはそろって目をしばたたかせる。
ヴリトラ。それは、アスラの育て親で、ウズメの友達の古代龍の名前だ。
「そんなわけねーだろ! こ〜んなチビすけがあの巨龍ヴリトラのわけねーよ」
「あ……チビすけ言うたな。ほな、証拠見したろか」
わたしの手から離れると深く息を吐いて、エルマーナが構える。
勢い良くあげた雄叫びの向こうに、なんとなく巨大な龍の姿が見えたような気がした。
「煉獄ぅーっ! 爆炎天衝波ーっ!!」