「くっそ〜! やるな……!」
「ほ〜ら、そんなに興奮しないで〜、こういうときは落ち着かせるためにちゃんと名前で呼んであげないと。きっと悪い子じゃないのよ。え〜と、名前なんでしたっけ? ワンちゃん?」
「ボクの名前はシアンだ! うわぁあん! 覚えてろよ!」
アンジュさんの言葉がトドメになったらしい。まだ幼い彼はぼろぼろと涙をこぼしながら二匹の犬と共に走り去って行った。
ちょっとかわいそうだったかな。今度会えたら、ちゃんとシアンって名前を呼んで頭撫でさせてもらおう。怖そうな犬たちだったけど、たぶん、たぶん……撫でさせてくれ……ないか。あの様子じゃ。
エルマーナがその背中にバイバイと手を振るのを見ながら、みんなは向き直って話し出した。
「それにしてもマティウスのヤツ、強引ねぇ! あんな子供まで使うなんて許せない」
「とにかく、創世力が大した価値のあるものだということはよく理解できた」
「ああ、教団の連中、手段を選ばないもんな。今の犬小僧だって、転生者とはいえ子供だぜ」
「マティウスだけじゃないよ。テノスの貴族も創世力を探しているんだよね」
言われて、ああアンジュさんを連れてこいってリカルドさんに依頼した人かと思い出す。
とすると、マティウス率いる教団とテノスの貴族の二つの勢力が創世力を探していて、その在処を知っているのがイナンナもしくはヴリトラ、オリフィエルだとあたりをつけている……ってことかな?
「でも、みんなが世界の破滅を望んでいるとは思えないんだけど。ねえルカくん、アスラさんはなぜ創世力を必要としていたの?」
「思い出せないよ。でも……アスラは天上界を統一したんだよ? その世界を崩壊させるはずがないと思うんだ」
「さっきのガキは創世力を使って理想郷を……とかなんとか言ってたな。そんなことが可能なのか?」
「そりゃあ、創世力って名前だし……むしろ名前的には、破壊ってよりも造る感じだよね?」
「まあな……でも、頭の悪い犬小僧の言うことだろ? アテになんねーだろ」
「なーもうそんなんどーでもええやん。キノコをお金に換えなあかんし、はよ戻らん?ウ チお腹すいた」
「ふふん。コーダも当然、腹ペコなのだぞ? しかし!」
ふんと胸を張って主張するコーダとエルマーナに苦笑がもれる。
でも、自分たちだってお腹がすいてないわけじゃない。
とりあえず考えるにもここを出て、ゆっくりできる場所でしようと決めて、再び下水道に戻るための道を歩き出した。