28-1

予想通り。わたしたち以外の班が頑張ってくれたかいもあって、次の目的地はアシハラという国に決まった。
目的は、創世力の在りかを探すこと。そのために、記憶の場を巡って、前世の記憶をたどること。
最初の目的地に決まったアシハラは、現在地であるこの国から東の方にある、古い歴史を持つ異文化の国だ。この国を調べ終えたら、その後は鍛治の神を祀るケルム火山のある西のガラム。そして南のガルポス、北のテノスと、世界中を巡り記憶の場と創世力を探すことになる。

アシハラへ向かう船に揺られながら、渡された世界地図を見ながらそのルートを指でたどって、なんだかRPGみたいだなあ、と改めて思った。
ひょんなことから自分の特別さを知って、仲間と共に世界を巡る。うん、王道だ。でも主人公というよりただのパーティメンバーかな。治癒術士としての力以外、なーんにも持ってないし。不安もあるけど、結構わくわくもしているのは、物語の登場人物になれたような気がしているからかもしれない。

「まったく。おたんこルカったら船酔いなんてだらしないわね」

まあそれ以上に、このメンバーに緊張感があまりない、というのも大きな理由かもしれないなと、うずくまるルカの背中を撫でながら苦笑した。
初めての船だ、なんて言っていた彼は見事に船酔いしてしまったらしい。イリアに話しかけられても、話す気力もなさそうだ。

「ん……あ……ああ……」
「あらイリア。あなただってさっきまで……」
「あれはただの頭痛よ。船酔いじゃないもん」

ふんとそっぽを向くイリアも、先ほどまで頭が痛い、と呻いていたのだけれど、楽になった今はもう過ぎ去った過去として流すつもりらしい。もしくは、これが彼女なりの気遣いなのかも。いや、それはちょっと、下手すぎるか。
船酔いや頭痛といったものを治せるような素敵な治癒術なんてないので、とりあえず背中を撫でるくらいしか出来ない。治癒術って、思っているほど万能ではないのだ。

「大丈夫かい、ルカくん。水でも飲むかい?」
「いや、いいよ……もうすぐアシハラでしょ。陸に上がればすぐよくなるから……」
「陸に上がって安心した時が一番やばいからね。駄目そうなら早めに言った方がいいよ」

油断禁物。戻す時は戻すし、油断した瞬間に堪えていたものが全部出ちゃうこともある。
そう心配すればルカは力無く笑ってくれた。

「お、アシハラが見えてきたぜ。ほら」

じっと船の先で遠くを見ていたスパーダがそう声を上げる。海の向こうに見えてきた島に、ルカがほっと息を吐いたのがわかった。
あと少しの辛抱だよと励ましながら着岸して、港に降りる。もう揺れない地面に安心したのだろう。すうっと深く息を吸って、ルカは安心したように笑った。

「ふう……ほら、陸に上がれば大丈夫でしょ」
「わりと単純だね」

まあ安心したけど、と笑い返す。
それからぐるりとアシハラの街を見回して、うーんと小さく唸った。
東の異文化と聞いた時から予感はしてたけど、このアシハラはなんとなーく日本に似ている気がする。わたしの日常にはなかったけれど、露店の雰囲気や衣服が、なんだか懐かしい気持ちにさせてくれる。
でもどこか、寂れてしまった気配もあって。無条件にはしゃげるほどの活気はそこにはない。

「ホントにここがアシハラかよ? 思ったより寂しい街だな」
「この街は年々水没しているからな。かつては広大な版図を有した海洋国だったのだが……」
「各地で起きている天変地異も、この街を見れば深刻さがよくわかるわね」

水没、かあ。
確かに、いろんな天変地異が世界各地で起きているとは聞いていたけれど、町が沈んでいくというのは目に見えて変化がわかりやすいし、人々が離れていってしまうのも無理はない。

「ふーん、アシハラってどんな国かよくわかんなかったんだけど……」
「見ての通りの島国だよ。リカルドも言ってたけど、昔はもっとたくさんの島に囲まれてて、景色とかもずっと綺麗だったそうだよ」
「それが今は海面が上昇して、そのほとんどが沈んでしまったわけか」
「ふうん。気の毒〜」

興味無さそうなイリアを見て、今がチャンスとばかりにエルとコーダが駆け寄った。
もちろん、早く行動しよう、ということではない。……観光しよう、という意味だ。

「なあなあ、はよ街見て回らん? 楽しみやねん、ウチ」
「そーだそーだ。エルの言うとおりなんだぞー、しかし」
「はいはい。じゃ、いこっか」

ということで、いつも通り複数のチームに分かれて、わたしたちは情報を集めることにした。