「駆け抜けること雷光の如し!獣皇雷神剣!」
素早く踏み込んで、スパーダがハスタの体を斬りつける。
長い攻防の末、トドメとばかりに落ちた雷に、ハスタはついに膝を着いた。
「う〜ん……ああ、お花畑が見える……な〜んちゃってぇ!」
「さあ、こいつとの縁も今日で終わりだ。リカルド。一番こいつと付き合いの長いあんたにとどめに頼むぜ」
「仰せつかった。動くなよ? ハスタ」
「いいかい? よ〜く聞くんだよ、よい子のみんな。こういうのはどうだろう? オレさまの命を助けて仲間に加える……という案は? 今時感タップリな展開じゃないかい! 強敵と書いてトモと読む。永遠の宿敵が新たな仲間に! まさしく友情! 努力! 勝利!」
今度は月曜日発売の週刊少年誌かよ。
なんだかネタが多いっていうか、こいつ実はわたしと同じで日本出身なんじゃないかと思うようなネタをぶち込んでくるなぁ。
まあ、心配せずともイリアたちはその提案には反対なわけで。耳を塞いでわざとらしく大声をあげた。
「あーあーあーあー聞こえないきーこーえなーい! ほらリカルド! さっさとヤッちゃえ」
「こいつの声聞いとったら頭ん中わいてきそうやわ。はよ駆除してえな。リカルドのおっちゃん」
「君の案、女性陣からは否決されてるよ」
「おいおい、オレの脳内会議では満場一致で即時判決だぜ? オレを許すとアレよー? 甘い汁吹い放題ダヨーシャチョさん?」
「おお、汁が甘いのか、しかし」
「ネズミ相手になに吹き込んでんのよ! もう待てない! 引き金ならあたしが引くッ!」
リカルドさんの隣に飛び出して、二丁の銃を突き付ける。
そこでやっとハスタは慌てて両手を降り出した。
「ちょっと待った! じゃあじゃあ案その3だ! あれ、2はなんだったか……まあいいか。これでいいだろ?」
カラン、と武器を捨てる。
それはあっさりと火口へと落ちていき、両手を上げる彼が完全に丸腰になったことを伝えた。
敵意はない。戦うつもりもない。
そうわかりやすくアピールをして、ハスタはまたニタリと笑う。
「その上でアタクシの持つ極秘情報を聞けば、みんなの意見もコロリと変わる。まるで山の転機のように!」
銃声が響く。
イリアとリカルドさんが撃ち込んだ音だ。
急所は外したようだけれど、だらりと彼の腕から血が垂れるのを見て、これ以上待つ義理もなければ、次で仕留めると次弾を装填する二人に、ハスタは珍しく普通のトーンで話を続けた。
「うわ! 無抵抗の人間を撃つなよ! 待った待った! 極秘情報、教えるからさぁ!ねねね? えーっと坊や? ちょっくら耳貸して。あとでちゃんと返すから
「え? 僕?」
「ルカ、だめ!」
「バカ! こんなヤツの話、いちいち聞かなくていいんだよ!」
「ほら坊や。よ〜く聞いてくれ」
思わず構えを解いてしまったルカに、スパーダが叫ぶ。
ぞわりと何かが込み上げて、わたしも叫んだけれど、ダメだった。
遅かった。何もかも。
「肉に刃が食い込む音をさ」
ぐぶり、と。
ルカの体を貫く槍の音が、やけに耳に響いた気がした。