ルカが無事に目を覚ましたということで、みんなはそれぞれの反応で喜んだ。
このままガラムに向かいたいところであったが、ルカはまだ病み上がりだし、ここの温泉は療養にもいいということで、快気祝いにみんなで温泉に入ることになった……の、だけれど。
「アンジュ姉ちゃん、隠しきれてないで!」
「きゃあっ! もう、エル! どこ触ってるの!」
「あんたは隠すものもないもんねぇ」
「うちは将来性があるねん。イリア姉ちゃんは絶望的やな」
「そんなこと言うのはこの口か! この口か!」
きゃっきゃっと盛り上がる女性陣を見ながら、わたしはなんというか、非常に、虚無のような気持ちだった。
とても華やかというかなんというか、美人さんは脱いでも美人さんなんだなと喜びのような気持ちも確かにあるのだけれど。温泉、気持ちいいんだけど。
なんだろう。この……この、世界の、美人さんの、レベルの高さ。
誰だよアンジュさんのこと太ってるって最初に言い出したやつ。十分細いよでかいよ。
「ちょっとミオ! あんたも何か言ってやんなさい!」
「みんな寝込め」
「真顔で何言ってんの!?」
露天風呂の隅っこで、わたしらしくない非常に暗い声で返せば、イリアがぎょっとした顔をする。
でもそんなのもう知らん。知らんし。知らないし!
「だいたいさぁ……いいじゃんみんな可愛いんだし……イリアはスレンダーで美人だし、エルは今も十分可愛いのにこれからまだまだ成長しちゃうんだろうし、アンジュさんも胸が大きいからそう見えるだけで十分細いし……」
「ちょ、ちょっと、ミオ?」
「わたしなんかスレンダーでもなければバインバインでもないし、そのくせあちこちの肉ぷにぷにだしみんなより明らかに太いし」
「おーい、ミオー?」
「自分は標準だって言い聞かせてたし実際標準体型のはずなのになに? まるでそんなことはないぜって言われてる感じやばくてわけわかんない。みんな十分なんだからいい加減にしろよ呪ってしまいたいけどみんなに元気に健やかにいてほしい気持ちも本物だからせめて寝込んじまえ」
「あかん。ミオ姉ちゃんが負のオーラにまみれとる」
「わたしだってせめてルカみたいに可愛い顔で年相応にいい体型になりたかったよ!」
「なんで僕!?」
「わっバカ!」
わたしの叫びに、露天風呂の敷居の向こうから声が返ってきた。
今のは間違いなくルカとスパーダだ。
ははーん。湯気が見えるし、この敷居の向こうって男湯なんだな。そして声が全部筒抜けだったということか。なるほどね。
まあわたしは何もないので、と卑屈になっている横で、顔を真っ赤にしたイリアが怒鳴り声をあげた。
「ちょっとルカ!? いるの!?」
「ご、ごめんなさい! いません!」
「いるじゃないのよ!!」
「ここ、外だと男湯と女湯隣同士やねん。しかも中で繋がっとるで。ウチ、泳いで確認したもん」
「エルは何を確認してんのさ」
温泉は泳いだり潜ったりしたらダメな場所だよ、と注意する。エルもはーいと元気よく返事をしてくれたところで、温泉には似つかわしくない銃声が響いた。
もしかしなくてもイリアだ。
温泉に銃器を持ち込むのはもっといけません。
「スパーダもいるのね!? 出て行きなさい! 早く!」
「なんで銃なんか持ってきてんだよ!」
「うるさい! 出てけ!」
「うわああああああ!!」
平和だなぁ。
露天風呂に響くスパーダとルカの悲鳴を聞きながら、女性陣はゆったりと湯船に浸かった。