36-2

「見事ボコボコにされて落ち込むスパーダに朗報です。深夜帯の露天風呂は混浴だって」
「うおおおおまじかあああああ」
「こらミオ? スパーダくんに何を教えてるの?」
「混浴はロマンだなって……」
「そうだよな! ロマンだよな! ロマンだから仕方ねぇよな!」
「何も仕方なくなんかありません。もう、ミオも問題児なんだから」
「問題児じゃない十代組なんかいません!」
「威張らない!」

温泉の入口のところで、スパーダと一緒にアンジュさんに怒られた。
女性と男性はだのセクハラは撲滅すべきだの。でも思春期だからある程度は仕方ないとして、だからこそダメなものだと理解しなさいうんぬんかんぬん。
アンジュさんのお説教は、非常に正しく、その通りだよなとわたしも思うような内容だ。
わたしもセクハラとかはダメだと思う。絶対にダメ。でも、まあ、気になる気持ちもわかるし、ある程度気を許してる仲間内ならいいかなって気持ちになっちゃってね。
そんな言い訳したらさらにお説教が延長されるから言わないけど!

「ったく。お前らガキだな」
「ガキですもーん」
「リカルドより若いから仕方ねぇしー」
「アンジュの説教だけでは足りないか?」
「じゃ、わたし戻るね!」
「あっくそてめ逃げたな!」

リカルドさんの話が始まるより先に、わたしは女子部屋の方へたったか逃げ出す。
ごめんスパーダ。でもリカルドさんのお説教はそんなに長くないから!
このままもう寝ちゃうかぁ、と二階の階段を登っているとき、ちょうど同じように部屋に帰ろうとしてたコンウェイさんと出会った。
昨晩、寝るまで一緒にいてもらったこととか、ガラにもなく後ろ向きになった姿を見られたことを思い出して、なんだか急に恥ずかしくなってくる。
けど、でも、チャンスだ。聞きたいことがあるのだ。たぶん、二人きりじゃないと絶対の絶対に教えてくれないだろうなってことで、気になっていることがある。

……コンウェイさんって、もしかして、この旅の先にあることを、知っているんじゃないかなって。

ルカは絶対に大丈夫って言っていたのもそうだけど、彼はいつだって、何が起きたって、そんなに驚くことはしない。まるでわかっていたかのように対応することがある。
それに、魂の救済ってなんだろう。魂って言葉を、転生者ばかりのこのメンバーの前で使うのも、何か意味があるような気がする。それに、ルカが転生者であることを、最初から知っていたみたいだったし。
何かを知っているからこそ、わたしもこの旅についていくべきだって言ったんじゃないかなとか。そんなことを思ってしまうのだ。

「コンウェイさんは、何をどこまで知ってるんですか?」
「君がぷにぷにだってことくらいかな」
「それは忘れろ! ていうか他もいたのか!」

わたしの僻み、あまり大声で言ってなかったんだけどな!
それなのに知ってるってことは、みんなアンジュさんたちの話に耳を澄ましてたのかな!
別に実際に見られたわけじゃないし、逆の立場だったらものすごく耳を澄ませる自信があるので責めることができずにいると、コンウェイさんは冗談だよ、と朗らかに笑った。

「ふふ。ボクが知ってるのは無垢なる絆のあらすじだけだよ」
「なんだそれ。じゃなくて、えっと……」
「ミオ」

きゅっと頬を摘まれる。
近くなった距離にびっくりして思わず身を引くが、コンウェイさんはわたしの左手首もぎゅっと掴んだから逃げられない。
ど、どうしよう。わたし、その、一応、コンウェイさんのことが好きなので。この距離の触れ合いは、ちょっと、困る。

「ふうん? 本当にぷにぷにだね。ほら、こーんなに」
「ちょ、やめてくださいよ。ほっぺくらい許してください」
「まあ、ミオならいいかな……ウレッティニキ ニラネロス」
「え?」

困るんだけどあきらかにこれ小さい子供とじゃれてる感覚だな〜ともわかってしまって複雑になっていると、ふと、優しく頬を撫でられた。
コンウェイさんはいつもより落ち着いた声で、表情で。いくつかわたしのわからない言葉を発したかと思うと、静かな声で話し出した。

「ボクの世界はね、トライバースっていうんだ。国境を挟んで戦争をしている、普通の世界」
「トライバース……」
「北にあるゲートから来たんだ。理由は魂の救済のため……これ以上は、キミには理解できないかな」

最後にまた何かわからない言葉を発する。
これはトライバースとやらの言葉なのだろうか。
とりあえず、いい感じに情報を出しつつ、あとは綺麗に煙に巻くつもりだということはわかったので、わたしはじとりとコンウェイさんを睨んでおいた。

「コンウェイさんって、実は性格悪いですよね」
「ははは。知ってるよ」