ルカの体調も落ち着いたことをしっかりと確認してから、わたしたちは次の目的地であるガルポスに向かうことにした。
ただ、不運が続くと言うか、なんというか。ガルポス行きの船がある港までの道で、落盤事故があったらしい。ここに来る前にも通ったカリュプス鉱山での事故らしい。
落盤事故自体は収まっても、今度は見たことのない魔物が出るようになったからとか、なんとか。とにかく今は行かない方がいい、とみんながくちをそろえて言っていた。
とはいえ、だからといってここでいつまでも立ち止まっているわけにはいかない。とりあえず行けるだけ行ってみようと無責任に誰かが言ったのを理由に、とりあえず街を出ることにした。
「高笑いしながらタライに乗って海を渡るハスタの目撃証言があったんだけど、もしかしなくてもまた遭遇しなきゃいけないの?」
「うっわ〜想像しただけで腹立つ〜」
「なぁなぁ、タライで海って渡れんの? 途中で沈んどるんやない?」
「いや……でもハスタだし……」
「そうだな、アイツだからな」
「ハスタだからな……」
「えらい信用しとんのな」
なんて。非常に危機感のないゆる〜い会話をしながら件の鉱山に入ると、そこには紫がかった霧が立ち込めていた。
ひんやりとして、どうしようもなく不安を煽る霧に、わたしたちは思わず身構える。
「これは……!」
「なんや、ここ……」
「なんだか来たときと雰囲気、違わなくない?」
「ああ……コンウェイと出会った森に、なんとなく似てるよな?」
「……ヘソがまたピリピリするんだな、しかし! これはまたピンチなんだな、しかし!」
騒ぎ出したコーダを抱きあげて、わたしはコンウェイさんを見る。
彼はいつもよりも真剣な顔をして、それから一人頷いた。
「……その通り。なんらかの理由で異界への入り口が開いてしまったようだね」
「異界への入り口……?」
「この世界とは違う、別の世界への入り口さ。まだ開ききってはいないようだけど。ここもまた、時空の歪みに近い場所……」
「なぜそんなことを知っている?」
「ボクからすれば逆なんだけどなぁ。ボクにとっては常識だから。じゃあ逆に聞くけど、何故こんなことを知らないの?」
珍しくコンウェイさんの言葉に疑問を持って問いかけたリカルドさんに、コンウェイさんは皮肉めいた笑顔を浮かべてわざとらしく質問を返す。
当然、リカルドさんは答えられない。だって、知らないことだから。知らないことをどうして知らないのかと問われたって、説明なんてできない。
「答えられないでしょう? 知らないことになんて、理由はないから。ボクだって同じさ。理由なんてない。ボクにとって当然のことを当然として知っているだけだから」
うまいこと言いくるめるなぁ。
コンウェイさんは自分が異世界から来たことを言うつもりはないらしいというのはわかっていたけれど、それにしたって交わし方がうまい。
まさにのらりくらり。言いくるめた彼は、次にルカに向き直った。
「……で、どうする? 行く? 帰る?」
「……コンウェイ。今回も力を貸してもらえるの?」
「もちろん。キミたちと出会ったときの約束だからね」
「……じゃあ、行こう。行けるところまで行ってみよう」