その後しばらくキュキュと会話を楽しんでいると、突然船が大きく揺れた。
それから響く、何か大きなものが海に落ちる音。
「登録番号120093。ガラム国籍船120093。ただちに停船しなさい」
「この声……」
続いて聞こえてきたアナウンスの声には聞き覚えがある。落ち着いた女の子の声。聞き覚えがある、女の子の声。
それが誰かを言葉にする前に走り出したキュキュに続いて、わたしも砲撃が飛んできた方向がよく見える甲板まで走ると、真っ黒な戦艦がそこにいるのが見えた
「何故砲撃を受けている!? 一体なにがあった!?」
「ガラム国籍船120093!」
「やっぱりこれ!」
「この声! あの女よ!」
「120093! ただちに停船し、投降しなさい! 抵抗する場合は撃沈する!」
しばらくして船が止まると、戦艦から小船が出て来る。それに乗って現れたのは、予想通り。声の主であるチトセだ。
彼女の周りについていた兵士たちに囲まれながら、わたしたちはチトセを見た。
「チトセさん……」
「アスラさま。マティウスさまの元へ同行してもらうわ。本当はこんな手段、取りたくなかったんだけど……言うことを聞いてくれないあなたが悪いのよ。今の私なら、こんな船簡単に沈められる。ねえ、無関係の人たちを巻き込みたくないでしょう?」
「てめえ! 卑怯だぞ!」
「言ったでしょう。本当はこんな手段取りたくなかったって。私だってこんなことしたくないわ。でも仕方ないじゃない。アスラさまが言うことを聞いてくれないんだから」
出会った頃とは違う、威圧的でどこか薄暗い言動に、わたしも思わず顔をしかめる。
「なんでヤンデレこじらせてんの? こんなことする必要……」
「わかったよ」
「ルカ!」
「だからこの船の人たちには手を出さないで」
「ああ……やっとわかってくださったのね、アスラさま!」
ルカの言葉に、チトセはとろけるような笑みを浮かべた。
それは本当に嬉しそうな笑顔なのに、続いてわたしたちに向けた瞳は酷く冷たいものだった。
「チトセ……」
「あなたも一緒よ。あなただって、転生者なんだから」