さて。あっさりとチトセに捕まって連行されて牢屋にぶちこまれたわたし達ですが、実はこれまたあっさりと外に出ていたりします。
というのも、キュキュが鍵開け技能を持っていたのだ。漫画とかで見たことあるけれど、本当に金具だけでちょちょいっと開けて見せたのだから感動した。もちろん、感動したのはわたしだけじゃなくて、エルも同じだ。
隣の牢屋にいた男性陣に自慢している彼女の言葉に、男性陣は驚いていたけれど、それならさっそく、とスパーダが檻を掴む。
「さっさとこっちも開けてくれよ!」
「……うん? 開けて欲しいか、ヘンな帽子も? ふ〜ん、そうか。開けて欲しいか……」
「欲しいに決まってんだろ! さっさと開けろよ!」
「それは命令。お願いと違う。キュキュは助ける。だたらヘンな帽子はキュキュにお願いじゃないか?」
なんだろう。なんか、やけに冷たい。
不思議に思って檻越しにコンウェイさんに問えば、彼は鉱山でスパーダが言った「得体がしれない」という言葉を根に持ってるのだと説明してくれた。
得体がしれないなんて言われて傷付いた。しかも、彼女の民族にとって「お願いする」というのはプライドもかけたとても重大な行為であったのに、それを蔑ろにしたスパーダが許せない。だから、なかなか助ける気になれない。
その説明に、なるほど異文化交流って大変だなあと思った。前者は異文化関係なく傷つくことだけれど、お願いする、という行為がそこまで重要なものだとは思わなかったし、何が人を傷付けるのかってわからないな。
もちろん、それを聞いたスパーダは、きっちり両足を揃えて綺麗に腰を折って、キュキュに頭を下げた。
「お願いします! 助けてください!」
「はい、わかた!」
根に持っていたわりに、許すスピードも速いらしい。いや、お願いする、って言葉があったから、快く頷くことになっただけかもしれないけれど。
これまたあっさりと鍵を開ける鮮やかな手つきに、思わずルカも感嘆の声をあげた。
「キュキュさん、すごい」
「鍵開けとか初めて見たよね。本当に出来るもんなんだなあ」
「簡単。ミオもできる」
「じゃあ今度、あたしにも教えてよ」
「それでちょちょーっと……」
「こらエル、イリア?」
「冗談だって!」
「アンジュ姉ちゃんたら厳しいなぁ」
男性陣が出てくるのを待ってる間に、アンジュさんから冷たい視線を向けられる二人に苦笑する。
とりあえず全員無事みたいだし、武器もすぐに回収できた。あとは、備え付けてあるはずの脱出用の小船を探して脱出するだけだ。
わたしは定位置の一番後ろの方に並んで続く。回復しかできないのに前の方に行く理由なんてないしね。もちろん、後ろからの奇襲の対策も兼ねて、いつもはイリアやコンウェイさんが隣にいてくれるのだけれど……今回は何故か、キュキュがぴったりとわたしにくっついている。何故だろう。でもにこにこと笑顔を向けてくれるから、わたしも笑い返しておく。
「……あれ。コンウェイどうしたの?」
「いや……なーんかちょっと、おもしろくないなって」
少し前の方の会話に耳を傾ける余裕もない。
よくわからないけれど、笑顔を向けられたのだから、わたしも笑顔を返すべきだ。つまりこれは、笑顔対決。
なーんて。たぶん、さっき船の上でハグするならわたしだけにって言ったから、こうして近くで守ってくれてるんだろうなというのは理解しつつ、ひたすらに笑顔を向け合った。