11.故郷の、手紙

お腹いっぱいです、とアスベルさんが言ったのをきっかけに宴は終わり、タクティクスを後にする。
次の目的地は騎士学校だ。彼らの拠点でもある。そこで、わたしはこれからいろいろと質問されるらしい。異世界からきた、と言うなら、ここがちょうどいいとは思うけれど……どうやって説明すればいいのだろう。
そう考えているところだ。広場にたたずむ女の子を見て、その可愛らしさに思わず視線がそちらに惹きつけられる。
赤毛のふわふわな髪に、フリフリな服。横顔だけで可愛いとわかる女の子とすれ違うだけでもなんだか幸せな気持ちだ。
その子がわたし達を見た途端、アスベルさんが足を止める。
そんなアスベルさんを見て、彼女も視線を止めると、不安そうに言葉を紡いだ。

「あなたは……もしかして……アス……ベル……?」
「まさか……シェリア? シェリアなのか?」
「……はい」

知り合い……だろうか。
どこかぎこちない態度ではあるが素直に頷いた彼女……シェリアさんに、アスベルさんは心底驚いたように声を出した。

「いや、びっくりしたよ。七年ぶりだものな。どうしてバロニアに? いつ来たんだ?」
「……ついさっき」
「来るなら言ってくれれば出迎えたのに」
「……手紙を見ていないの?」
「手紙?」
「至急ラントに戻るようにと、ケリー様からの」
「いや、任務があってしばらく学校を離れていたから見ていない。何かあったのか?」
「……アストン様がお亡くなりに」

息を飲む音が、やけにはっきりと聞こえた。
その“アストン”というのが誰で、二人がどういう関係なのかは知らない。
ただ、アスベルさんの顔色が一気に変わった事から大事な人だったという事だけはわかる。

「……なんだって……? 親父が……!?」

呆けたように呟いて、アスベルさんはシェリアさんの両肩をつかむ
腕を揺さぶって、どういう事だと繰り返す様子は明らかに動転していて、わたしとマリクさんは努めて冷静に彼の腕をひいた。

「どういう事だ、なんでそんなことに!?」
「アスベルさん」
「シェリアさんと言ったか。詳しい話は中で聞こう。二人とも教官室へ来てくれ。シオリもだ」

命令口調で支持するけれど、次の瞬間には純粋に教え子を心配する表情を浮かべる。
誰かの訃報を聞いて冷静でいられるはずがないことくらい、みんなわかっている。でも、だからと言って足を止めるわけにはいかないのだ。

「アスベル、気をしっかり持て。いいな」

だからあえてそれだけを言って、先にシェリアさんを連れて中へと入っていく。
わたしが腕を掴んだままのアスベルさんは、未だに呆けた顔で地面を見つめていた。特に何かが出来るわけではないわたしは、とにかくその腕を優しく、でも強く掴み続けた。

「親父が……死んだ……」