84.輝石の、性質

「なんだ? あの穴は」

港を出て、町へ向かう途中でそれを見つけて、わたしたちは足を止めた。街道から少しそれた場所。視線の先には、ぽっかりとした大きなクレーターのような穴が出来ていた。
たぶん、わたし達全員がゆうに入ってしまうくらいに大きくて深い穴。いったいなんだろう。隕石でも落ちたのだろうか。

「クレーター?」
「う〜んまだ残ってたか。そりゃこんだけ大きければ簡単には消えないよね」
「パスカル、前にもこの穴を見た事があるの?」
「うん、ま〜ね」

そうか、わたしたちが会えたのって本当に偶然で、パスカルはもとからあっちこっち旅してたみたいだもんね。小競り合いはしつつも実際に開戦しているわけではないから国境は超え放題だし、彼女が以前にフェンデルに来たことがあったとしても不思議ではないか。
それにしても、フェンデルにはこんな穴がいくつもあったりしちゃうのだろうか。

「どうやって出来たのだろうな。これほどの穴が理由も無しに突然生まれたのは考えにくいが」
「輝石の力が暴発したんだよ」
「そんなことがあるのか?」
「あるんだねぇ。フェンデルの輝石は性質が厄介でね。扱いはなかなか難しいんだよ」

輝石にも性質なんてあるんだ……しかも暴発して穴が空くだなんて、危ないにも程がある。フェンデルは思っているよりも大変な国なのかもしれない。
ふと、近くを見回っているらしい軍人達の視線を感じて、わたし達は小さく目配せをした。

「あまりもたもたしていると疑いを抱かれるかもしれない。早くベラニックへ向かおう」