95.雪山の、遭遇

山頂付近まで登ったところで、後一息だよ! とパスカルが言う。
雪山登山は想像以上に辛かった。最初のうちはみんないろんな話をしていたけれど、途中からは露骨に会話が減ったし、戦闘もいまいち動きが悪い。
寒いし、過酷だし。仕方ない。でももう一踏ん張り、と首を振ると、僅かに地面が揺れるような音がした。

「今何か……聞こえた」

地響きのようなそれに、みんないつでも得物を抜けるようにしながら辺りを見渡す。
そうすればやがて、少し離れた所に魔物が現れた。
大きなイノシシ型の魔物。いや、イノシシというにはちょっとデカすぎるけど。

「こいつは……」
「でか……」
「たかがイノシシです。そう慌てなくても……」
「弟くん背中見せちゃだめ! 危ない!」

気にしないという風に警戒を解いて歩き出そうと背中を見せた途端、魔物が一気に地面を蹴った。
わたし達には目もくれず、背中を向けたヒューバートさん目掛けて一直線に走る。ヒューバートさんに当たる直前のところで彼を突き飛ばしたパスカルは、簡単に地面へと倒れ伏した。

「パスカルさん!?」
「いてて……弟くん……大丈夫?」

すぐに立ち上がって戦闘体制に入るパスカルは、一応は無事らしい。それを確認してから、マリクさんは魔物へ視線を向けた。
わたし達もそれに習い、それぞれ構える。

「全員身構えるんだ! この辺は気候が厳しいせいで野生動物といえども凶暴だ、背を見せたら襲ってくるぞ! ……来る!」