ウォールブリッジの地下遺跡に似たような入り口を通ると、そこはすでにアンマルチア族の里だった。
本当に一瞬、扉もなにもないようなところからワープしたら、あっという間に里の中。なるほど、確かにあの遺跡はアンマルチア族が作ったというのも納得だ。里の全体の造りや雰囲気は地下遺跡に似ていて、だが照明のせいか、あそこよりもずいぶんと明るい印象を受ける。
地下遺跡に行った事がないシェリアとマリクさん、そしてヒューバートさんは、ワープの感覚はもちろん、外では見ないような仕組みの景色に、物珍しそうに辺りを伺った。
「ここがアンマルチア族の里……? なんだか独特な感じね」
「オレがフェンデルにいた頃はここの事は何も知らなかった」
「大っぴらにしてないだけで、フェンデル政府には技術提供とかちょこちょこやってたんだよ。さ、まずはあたしの部屋に行ってみよう」
サッサと歩き出したパスカルについて歩く。ちょっとくらい観光したいが、まあそういう状況でもないので黙っておく。
なんとなく後ろの方を歩いていれば、ヒューバートさんにそっと話しかけられた。
「シオリさん」
「なぁに? ヒューバートさん」
「いえ……ぼくはあなたの事も疑っていましたからね。ですからその、一応謝っておこうと思いまして」
一瞬キョトンとする。それから、嗚呼、そういえばわたしだけさっきのイベントに参加しなかったなと思い出した。
別に、わたしは彼らほどバチバチに疑われていたわけではないし、構わないのだけど。律儀に謝りに来たらしいヒューバートさんに、思わず笑みがこぼれる。
「別にいいよそんなの。超治癒力がある部分的記憶喪失の人間なんて、確かに怪しいしね」
「皆さんは……甘過ぎます」
「あはは、かもね。で、わたしからも何か罰がないとダメかな?」
「けじめですから」
うーん、しかし何を言おう。
正直わたしもパスカルと一緒で友達になって! と言いたいところだが、なんとなく被るのもつまらないかなと思う。かといって何か凄い罰ゲームがあるわけでもないし……あ、そうだ。
「じゃあ、わたしの事「シオリお姉ちゃん」って呼んでよ!」
「……は?」
「いやね、みんなわたしの事年下扱いし過ぎだと思うんだ。わたし22だよ? 年上だよ? アスベルとシェリアなんてスッゴい過保護だしさー。だから、一人くらいにはお姉ちゃんって呼んでほしくて!」
「……そういう所が年下扱いされるんだと思いますよ」
返事に間があったヒューバートさんは随分驚いているらしい。よかった。罰ゲームとは言っても彼に無理やり何かしたいわけではないし、こうして驚いてくれる方が、それっぽくていい。
仕切りに眼鏡を押さえる動作に、わたしはやっぱりこの罰ゲームで行こうと決意を固める。
「わたしも、ヒューバートくんって呼ぶからさ。ちなみに反対意見は聞かないよ。罰ゲームだもん、嫌がれば嫌がるほど成功だからね。お姉様でもいいよ?」
「なんでそうなるんですか! わかりましたよ……その……シオリ姉さん」
照れながら紡がれたそれはこそばゆい物があるが、しかし。
アスベルに対する「兄さん」を聞き慣れているせいか、なんだか違和感がある。嬉しいけど違うっていうか。ううん、なんだろう。
「……なんか似合わないなー」
「あなたが言ったんでしょう!」